10年来の友人にEちゃんというものすごく霊感の強い子がいる。
引用元: ・死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?281
10年来の友人にEちゃんというものすごく霊感の強い子がいる。どのくらい強いかというと、幼い頃から予言めいたことを口にしていて、
それが口コミで広がり、わざわざ遠方からEちゃんを訪ねてくる人がいたくらい。
その人達の用件は主に、行方不明になった我が子を探してくれてというもの。
Eちゃんは写真を見ただけで、その人物がどこにいるのかがわかる。
そして実際に当たっている。
ただし、その人物が亡くなっている場合のみだけど。
幼かったEちゃんは深く考えずに、
「コンクリートの下に埋まってるよ~」
なんて答えていたらしい。
やがて成長すると、自分がどれだけ残酷な回答をしていたか気付き、人探しは断るようにした。
それから周りには能力が消えたフリをし続けてきたらしい。
本当はいつもうじゃうじゃ霊の存在を感じていたけれど。
佐々木希と北川景子を足して2で割ったような顔をしている。
あんまりに美少女だったから高校の時、芸能界入りを勧めたら、
某大手プロダクションのオーディションにあっさり受かりやがった(笑)
だけど本人にやる気がなかったせいか、半年くらいで辞めてしまった。
それからは普通の高校生として、Eちゃんはよく私と遊んでくれた。
学校帰りにはいつも2人で買い食いしてた。
ある時、どこかの施設の外階段に座って2人でお菓子食べてたら、
上から降りてきたおばあさんに話しかけられたことがあった。
おばあさんは足が悪そうだった。
おばあさんが言った。
下の道路はたくさんの人で溢れている。
お祭があるのだ。
こういう時、人見知りの私はいつもEちゃんに話を任せてしまう。
しかしその時のEちゃんは違った。
そっぽを向いて、おばあさんと話す気などまるでなし。
仕方なく私が答えることにした。
祭があることを教えると、おばあさんは納得した。
「だからこんなに人がおるんだね~」
おばあさんはにこにこしていて、足を引きずりながらゆっくり階段を下りていった。
その間、Eちゃんはずっと黙っていた。
そしておばあさんの姿が視界から消えると、ようやく口を開いたEちゃん。
驚いた。
私は半笑いで訊いた。
しかしEちゃんは真顔だった。
「嘘だと思うなら階段下りていってみなよ。もう姿消えてるはずだから」
半信半疑で階段を下りるも、すでにおばあさんの姿はなかった。
1階まで下りて探してみたけど、どこにもいない。
その階段というのが螺旋階段に近い作りになっていて、確か階段を使うためには、
1階、5階、7階から入るしかないはずだった。
5階から1階までの間に建物の中に入ることもできない作り。
そして私達が座っていたのが、5階辺り。
そこから1階まで、足をひきずっていたおばあさんが短時間で下りられるわけないのだった。
「あたしに能力があると知ったら、害のない霊でも憑いて来ちゃうことあるから」
「私、普通におばあさんと会話しちゃってたんだけど…」
「平気平気」
すごくナチュラルに出てくるものなんだ…。
「亡くなって霊の姿になっても足をひきずってるなんて、可哀想だね」
「いやいや実際あたしが普段見てる奴らはあんなもんじゃないから。もっとぐろいよ」
あんな優しそうなおばあさんの霊を見ただけでも、
やっぱりちょっと怖いなと思っていた自分が恥ずかしくなった。
そして改めて、Eちゃんが置かれている環境の特殊性を知った。
お互い仕事とアルバイトに追われ、Eちゃんとはあまり会えなくなった。
Eちゃんが仕事を辞め、夜の仕事を始めたと聞いたのは、高校を卒業してから1年程経った頃だった。
夜の仕事を始めたきっかけは、父親のリストラだったそうだ。
さらにEちゃんの家には早くに結婚して出戻って来た妹さんと、Eちゃん似でイケメンなのに、
なぜかひきこもりの弟さんがいた。
Eちゃんは家族を支えるため、必死に働いていた。
なんだか実家に寄生してふらふらアルバイトをしている自分が恥ずかしくなった。
仕事場となった店舗は、数年前に殺人事件があった現場。
今でも検索すればすぐ事件を特定されてしまうので、実は職種ははっきりとは書けない。
曰くつきの職場ということで、いざ働き始めてみると、色々な話を耳にした。
前の店長が失踪したとか、社員がみんな病気になるとか。
しかし私は特に何の変化もなかったので、気にせず働いていた。
そして働き始めて1年が経った頃のこと……。
客は数人しか来ず、開店休業状態。
店長と社員さんは配達に出てしまったため、店番は私1人。
雨のせいか辺りは薄暗く、なんだか気味が悪かった。
レジで手仕事をしながら時間を潰していると、足音が聞こえた。
気付かぬうちに客が入ってきたのかと思い、とりあえずブックオフ風に店全体に響き渡るよう、
「いらっしゃいませー」と声をかけた。
それから客の相手をしようと店内を探したのだが、誰もいない。
気のせいだったのかと思ってレジに戻り、仕事を始めるとまた足音。
だがやはり客の姿はない。
こんなことを何度か繰り返していると、さすがに怖くなってきた。
すぐにダダダダダッという足音が近づいてくるのがわかった。
やばいやばいやばい……恐怖に硬直していると、視界に見慣れたジャンパーの色が入った。
店長が配達から帰って来たのだ。
ほっとした瞬間、足音が消えた。
おそるおそる振り返ってみる。
誰もいなかった。
「どうかした?」
何も知らない店長が、不思議そうな顔をして訊く。
私は平静を装って、
「なんでもありません」
と言った。
しかし声を震えていたと思う。
わたしは店舗で一番の古株になった。
新しい店長は大学出たてでまだ右も左もわからない状態。
その店長とほぼ同時に入って来たのが、アルバイトのKくんだった。
Kくんは最近までニートでひきこもりに近い生活をしていたとかで、なんだか挙動不審。
店に出して客の相手をさせることはまず無理だろうということで、Kくんの仕事は主に、
配達の助手や事務的なことが中心だった。
しかしいざ働いてみると、Kくんは案外面白い人だった。
私の知らないアニメや漫画をよく教えてくれた。
やがてみんなと打ち解け、明るくなったKくんは、
レジ操作なんかも覚えて接客も出来るようになった。
その日は客が多く、レジが混雑してきた。
私1人では回すのが難しくなってきたので、Kくんに応援を頼もうと、
客が途絶えた瞬間を見計らって事務所のドアの外から呼びかけた。
「Kくーん、ちょっと出てきてもらっていいー?」
事務所の中からは返事がない。
事務所のドアは上1/3くらいが曇りガラスになっていて、外から中の様子がぼんやりと窺える。
スタッフジャンパーを着た人影が中で動いていたので、Kくんが確実に中にいることはわかった。
聞こえてないのかと思い、ドアを開けて直接話すことにした。
ガチャガチャ……。Kくん、内側から鍵かけてやがる。
この忙しい時に何やってるんだか…怒りに任せてしばらくドアノブをガチャガチャやりながら、
大声で中のKくんに呼びかけていた。
Kくんだった。あれ?事務所の中にいるはずじゃ……。
Kくんは店の裏で掃除をしていたのだという。
じゃあ今、事務所の中にいる人は誰?
そう思った時、いくらやっても開かなかったドアが、あっさりと開いた。
中には……誰もいなかった。
確かにスタッフジャンパーを着た人影が動くのを私は見た。
だからKくんが中にいると思ったのだ。
しかしKくんはずっと店の裏にいた。
事務所には窓がなく、出入りするにはこのドアを使うしかない。
じゃあ私が見た事務所の中の、スタッフジャンパーを着た人はどこへ行ってしまったのだろう。
背筋に冷たいものが走った。
それから数日後、出勤すると店の裏口に花が供えられていた。
数年前に起こった事件…その日は被害者の命日だった。
毎年この日になると、遺族が夜のうちにひっそりと花を供えに来ている。
事務所の中には小さな仏壇がある。毎年、花はその仏壇に挙げていた。
それからしばらくして花は枯れてしまうが、スタッフの誰もその枯れた花を始末しない。
なんとなく、触れたくないとみんな思っているようだ。
仕方なく、私が手を伸ばした。
その時だった。
何か気に入らないことでもしただろうか…あの挙動不審なKくんが、こんなにも怒りを露にするなんて。
「え…ごめんね。どうしたの?」
私はKくんに謝った。
しかし、
「ん?何のことっすか?」
Kくんはきょとんとしている。
「今、怒鳴ったよね?」
「いえ、何も言ってないですけど」
そんな出来事があってからも、私は変わらずその店で働き続けた。
店長と付き合い始め、職場恋愛に浮かれていたのだ。
いつもスタッフが帰った後、店長と2人残ってレジ閉めしたり、店のことを話したり、楽しかった。
ある日、閉店時間になっても配達から店長がなかなか帰ってこず、閉店後も私は1人、
仕事をしながら彼の帰りを待っていた。
そういうことは今まで何度かあった。
彼が戻ってくるまで、1人は怖いので、大抵は店の電話を使って友達と話ながら待つことにしていた。
その日は久しぶりにEちゃんに電話を掛けてみることにした。
しかし、次第にEちゃんの口数が少なくなり、声のトーンも暗くなった。
心配になった私が訊いてみると、
「Mちゃん、今、職場にいるんだよね……?」
「うん、そうだよ」
「今すぐそこから離れて!早く!」
「さっきはどうしたの?」
私が何か言おうとするとのを遮り、Eちゃんが言った。
「あんたの職場やばいよ。店で電話してた時、すごいノイズが入ってたし、Mちゃんの声も変な風に聞こえた。別人みたいな声になってた」
私は迷った。Eちゃんの言うことなら信じられる。
だけど、すぐに辞めたら周りに迷惑がかかるし、次の仕事を探すのもこんな田舎では難しい。
迷った末、どうにも決めかねて、次の日も仕事に行くことにした。
翌朝、家を出ると目の前にEちゃんがいた。
久しぶりの再会だった。
だけど、なぜこんな朝っぱらから訪ねて来る?
Eちゃんは会って早々、玄関の前で土下座をしてきた。
Eちゃんは泣いていた。
思えば、Eちゃんが泣いたところを見たのはその時が初めてだった。
私はまずそのことに驚き、かなりうろたえた。
結局、私はEちゃんの剣幕に負け、その日は仕事を休むことにした。
そして結局一日中、Eちゃんに説得され、そのまま仕事を辞めることになった。
その人も、もうあの店は辞めたらしい。
話を聞くと、私が仕事を辞めてからも、やはり色々とあったらしい。
みんな体を壊したり、ノイローゼになったり、事故に遭っていたり……。
Eちゃんは私がこんな目に遭わないように、仕事を辞めるよう説得してきたのだった。
夫となった人に会わせると、Eちゃんはとても喜んでくれた。
「もう大丈夫だね、Mちゃん。これからはこの人がMちゃんを守ってくれるよ」
なぜモデルになりたいと言っていたくせに、せっかく入れた芸能事務所を辞めたのか。
昔から、私が1人で出かけようとすると、Eちゃんはよくついて来たがった。
ビジュアル系なんて興味ないくせに、ライブにまでついて来たし、買い物だって美容院だって、
わざわざ私の趣味に合わせてくっついて来ていた。
全部、私を守るためだったのだ。
中学で初めて会った時、Eちゃんは私の背後に憑いている者の存在を気にしていた。
そして、その者が引き寄せる数々の悪い者から、Eちゃんはずっと私を守ってくれていたのだ。
Eちゃん曰く、今の旦那と一緒にいれば、私はもう大丈夫らしい。
肩の荷が下りたように、Eちゃんは晴れ晴れとした顔をしていた。
その勉強はものすごく辛いものらしい。
今まで無意識だった能力を、意識して使おうとすると、よく分からないのだが、力が暴走するらしい。
そのせいで、見たくないものが部屋に横たわっていたり、色々な者が寄ってくる影響で、
体を壊して何度も病院に運ばれたりしている。
それでも彼女は頑張り続けている。
私はもう一生、彼女には頭が上がらないだろう。
Eちゃんと出会わせてくれたことを、神様に感謝したい。
以上、嘘っぽいところもあると思いますが、すべて実際に起こったことです。
長々と失礼致しました。