友達の話。
友達にも俺自身にも霊感はあります。
ただ、その感じ取り方がそれぞれ違っている。
俺は予知関係の力が強く、心霊的な存在に対しては、いるのかいないのかは感覚だけではっきりと感じ取れる程度。
意識的に聞こうとすれば聞こえる、見ようとすれば、目を凝らせばメガネの度が合わない感じで見える。
ただ、あそこにいると場所を指定されなければ自分で場所は特定できない。
まあ、書いておいてなんですが、ここでは俺の話は関係ありません。
余談ということで。
対して友達の方だが、俺のような予知に関する能力はない。(元々予知自体特殊なものらしい。)
しかし、心霊関係となると感じるわ聞こえるわ見えまくっている。
おまけにそういうものに害される人間でもない。
これって感じるばかりか感化されておかしくなるやつと、全然平気でけろっとしているやつがいるけど何なんだろうね?
体質?守護霊??
まあとにかく、友達は後者なわけです。
本人はそういうものをまったく怖がってもいなくて、面白がって心霊写真と呼ばれるものをバシバシ撮って見たくもないのに俺に見せてきたりする。
まあ、友達はそういうやつなんですが、ひとりかくれんぼってあるじゃないですか?
その日の前の晩も、あるスレでそいつが盛り上がって友達はその実況を見てたそうなんです。(やつはROM専)
で、途中でパソコンつけたまま寝ちゃって、起きたのが午前3時。
トイレに行こうと思ったらしいが、部屋の中が何かおかしい。
灰色っぽい。
電気もつけっぱなしだったんだが、白い蛍光灯の光の強さが半減したように、部屋の中が灰色。
で、何か来たなと思ってとりあえず一応ジッとしておこうと思った瞬間、ドン、と壁が鳴ったらしい。
気の短い友達は「隣の部屋のやつが壁ドンしやがった」と思い音がした方の壁を強く殴り返したそうだ。
殴った後、おかしいと気付いたのは周りがまったく無音になっていた。
それに今の時間、いつも隣人は寝静まっている。
生暖かいぬる~いものを感じて友達が振り向くと、家(友人の家はマンション)の唯一の入り口の方の壁の影から黒い影のような顔が、ぬっと顔を出したらしい。
影にも目鼻口らしきものはあり、おそらく男性だろうと思われたそうだが、出てきた顔の位置は普通の男性が歩いて出てきたような位置だったのだが、続いて出てきた身体が異常に大きかったらしい。
ものすごいガリガリなんだが、まず手が普通の二倍くらいある。
掌がでかい。
サル類のように首や背を折り曲げ、ゲームの零ってあるじゃん?
俺は1しかやってないんだがあれに出てくる幽霊みたいな動きで、そいつは一気に友人に近付いてきてきた。
いつもなら適当に殴ったり蹴ったりして追い返すんだが、咄嗟に対処できずにそこで友達は気絶した。
それで、その時夢を見たらしい。
どこかの和室に綺麗に敷かれた布団で眠っている友達と、その友達の父親の周りをぐるぐると徘徊しているあのひょろでかい影の怪物。
部屋は、寝る時なんかにつける黄色い灯りがついていて、夢の中で夜目がきくようになっていた友達にはそいつの姿がありありと見えたらしい。
だが身体は動かない。
そうしている内に、そいつが友達の父親の頭の上で止まった。
そいつは友達の父親の上に覆いかぶさるようにして大きく口を開け父親の首を噛もうとしていたらしい。
そこで、なぜか友達にはそいつの顔がはっきり見えた。
何かものすごい熱を顔全体に押し付けられたように顔全体が爛れていて、歯茎がむき出しだったらしい。
そこで目が覚める。
目が覚めると、今度は友達は、友達の昔の実家にいたらしい。
場所は居間で、真昼間だが父親が酷く怯えている。
外は晴れているらしいのに空気が恐ろしく重たく異様で、友達さえ怯んだらしい。
居間の窓が半開きになっていて、網戸は閉まっていたが、何とも心もとなく、そこから何かよくないものが入ってくると、なぜかその夢の中では確信していた友達は、居間の窓を閉めようとした。
しかし、恐怖で身体が竦んで動けない。
それでも窓から目を逸らせずにいる。
そこで夢が終わる。
目が覚める瞬間に、恐ろしく目が吊り上り顔ごと立て向きに変形したような狐の姿を見たらしい。
こういうことが初めてではない友達は、目が覚めてもまだ言い知れぬ恐怖から解放されない身体とは裏腹に、ものすごく冷静な理性で「ああそういうことか」と思ったらしい。
汗をびっしょりかいていたためシャワーを浴び部屋を確認したが何も異常はなく、一応父親にも連絡したがやはりいつもの能天気な調子だったという。
どういうことかというと、こっくりさんとか何とか、ここではひとりかくれんぼだが、そういうものを見ているだけで影響をうけるとはよく言うが、便乗してきた低級霊(主に獣)なんかが便乗してきたりするんだよな。
普通は心霊スレを見ていようが何だろうが、健全な人間の心の奥底には絶対的に怖いものを拒絶する。
回避したい、生命を守るための本能があるから。
分かりやすく言うと、それが壁のような役割を果たしてブロックしてくれるんだが、友達の場合、よくわからないものに対しての恐怖心が薄い。
それは自分で撃退してきた実績だったり慣れのせいなのだが、そのせいで「善くないもの」と縁が繋がってしまい(波長が合うというか)おこぼれのようなものがこちらにきたわけだ。
低級霊といってもおこぼれはおこぼれで、特に友達のような、霊感と一緒に霊的なものに対する抗体?のようなものまで持った人間にはなかなか手を出せない。
直接接触を試みたが(最初のひょろでかい影の化け物)うまくいかず、それで夢の中で・・・という方法をとったらしい。
そもそも中級ほどのものであれば、接触する前に友達に関わるのはやっかいだと大体のものは判断するらしく、かといって上級以上のものは、余程こちらから関わろうとしたり、運が悪いのでもない限りお目にかかることはないそう。
あと、姿形や夢の中の演出などやけにコケ脅しがあるのも雑魚の特徴だそうだ。
それだけやってどうにも憑けないと判断したらしいその低級のものは、朝になる前に脅すだけ脅して実害はほぼ与えられずにどこかへ行ってしまったらしい。
首の噛み跡も二日程度で消えてしまったらしい。
噛み跡をつけることができたのは、おそらく友達が気絶していて僅かばかり守りが薄くなっていた?のと直接害をなせず、友達の父親の形をとった何か媒体?を使って間接的に関わったかららしい。
珍しくやるだけやられて逃げられた友達は(それもらちが明かないとしっぽを巻いてのことだと思うが)「やり方が汚い」「小賢しい」と言ってキレていた。
俺としてはそんなことがあった後に平然とシャワーを浴びれる友達の方が恐いという話でした。