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もう20年くらい前の話。
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もう20年くらい前の話。
俺は岐阜出身なんだけど、当時は社会人になりたてで、
仕事の都合で北海道の帯広に住んでた。
で、夏に初めての長期休暇をもらったので、
屈斜路湖、摩周湖、阿寒湖あたりを一人旅で回ることにした。
その頃はわりと無鉄砲で物を知らなかったので、
旅館の予約とか何もしなかった。
屈斜路湖に行く前か後だか忘れたけど、
川湯温泉で一泊するつもりでスケジュールを組んでた。
でも現地に行ってびっくり、あそこは宿泊施設なんか何もないのな。
しかたがないからどこか野宿できそうなところを探して
駅近くをふらふらしてた。
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もう夜の七時くらいになってた。
周囲は真っ暗。
人家もまばらで、街灯がかなりの間隔でぽつぽつと点いてる程度。
ふと祭りの音が聞こえてきた。
ああそうか、八月だからどこか近くで夏祭りやってんだなと思った。
祭りに紛れ込んだら、時間をつぶせるし、飯も食えると思った。
で、祭りのざわめきに向かって歩き出した。
ところが、ちっとも着かない。
道はぐねぐねと上下して大小の坂が連続してた。
祭りのにぎやかで楽しそうな音は、すぐ近くのようにも聞こえるし、
ちょっと遠いような感じもする、微妙な聞こえ具合。
あと少しで到着するはず、と考えて、俺はひたすら歩き続けた。
小学校の国語の教科書の「あの坂をのぼれば」みたいな状態。
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一時間ぐらい歩いて、「なんかおかしい」と思った。
人家からずっと離れてしまったみたいで、
道は山のほうに伸びてて、そっちには街灯がなくて真っ暗だった。
でも祭りの音はまだ聞こえてる。
本当、目の前の坂を越えたらもう祭りの会場があるみたいな感じ。
俺はそこで急に怖くなって、元来た道を引き返した。
戻ってくる時も祭りの音はずっと聞こえてた。
でも駅が見えたときに、急に静かになった。
そのときには夜の十時ぐらいになっていたと思う。
結局駅前の電話ボックスの中で一泊した。
書いてみるとあんまり怖くないかな…
でもあのとき急にわれに返って「なんかおかしい」と思った瞬間
めちゃくちゃゾッとしたのを覚えてる。