俺が昔サーフィンしてた時の話。
土曜の夜は仲間と先輩がしている店に集まり腹ごなしをし、 そのままの流れで、和歌山の某所のポイントで 日の出サーフィンをしに向かうのが楽しみだった。
その日も板をつんだ車三台に分乗して、おさな馴染みの修が運転、 俺が助手席に座り、いつものように軽快に走っていた。
海に平行に走る国道を走ると、古い街並が続く。
しかし、市を二つ越えると次第に街並は消え、時折漆黒の海がみえてくる。
「修、ほら、あそこの地下道で前殺人があったやろ、 それ以来夜になってあそこ通ったら誰か後ろからおばけがつけてくるらしいで。」
「気のせいやて。そんなん信じてんの?おばけなんかおらへんて。」
霊の存在なんて一切信じない修は、俺のはなしをニヤニヤしながら笑いとばした。
夜中の2時過ぎに走る車は俺達の三台だけで、前の二台とは少し離れて三台目を走っていた。
そうこうしているうちに、霊がでると地元では噂されている○○峠にさしかかった。
ゆるやかなカーブをやや左にまがったあたりで突然深夜運転していた修の表情がこわばった。
顔色が変わり、あきらかに青ざめてきた。
「おい、どないしたんや?気分悪いんか?代わろうか?」
修は硬直したまま「ひ、ひだ…ひだり!」と絞りだすような声で言った。
「え?左?」その声に反射的に左のウインドの外をみた。
丁度俺の横の窓のところに、髪がストレートで長く、年令は20才前後か。
目鼻立ちがハーフっぽく、今までお目にかかったことがない
驚く程綺麗な女性が、黒い髪をなびかせて、ぴったり横に走っていた。
突然の意外な出来事で事態が把握できず、しかし(あれ?何でや?)…。
その瞬間女はニタッと笑ってくるっと正面をこちらにむけた。
その瞬間俺は恐怖で身動きがとれなくなった!
その綺麗な女性の顔半分は肉が削げ落ちて血がしたたりぐちゃぐちゃに潰れていたのだった。
恐怖のあまり悲鳴にもならず、「ぐぁ!」っと声がでて
それが合図かのように、修が車のスピードをあげて、 俺は少しでも窓から遠ざかりたい心理で、身動きもとれない中でにつっぷした。
…後日他の友人にはなしをしたらその峠は以前、女性が撲殺され、 この峠の道のすぐ下の草むらで遺体が発見されてから 霊が頻発してでるので有名な場所だということだった。
あれ以来霊を信じなかった修は、二度とその道を通ることをやめた。