節分で思い出した話。
「鬼は外、福は内」って言いながら豆をまくのが普通だけど、たまに「鬼は内、福は外」って逆に言っちゃうことない?
うちの地域では間違えた時は、間違えた時より大きい声で言えば訂正されるっていうローカルルールがあった。
小学生の時、節分ってことで昼間に友達数人で近所の稲荷神社に豆をまきに行くことにした。
その稲荷神社は山の中にあり、獣道を100メートル程登った先にある。
普段は誰も行かないような場所で年に一回節分の日だけ行くような場所だった。
稲荷神社について早速豆まきをするとA子が逆の「鬼は内ー!!」と言ってしまった。
みんなで
「大きな声で言い直せば大丈夫だよ!」
と言うと、A子はふて腐れた顔をし、「迷信だよ。バカじゃん。」
と言って訂正をせずに行ってしまった。
稲荷神社の鳥居に向かってA子が歩いて行くとつんのめるような仕草をした。
「誰!痛いんだけど!!」
とA子は怒りながら振り向くが周りには誰もいない。
そしてしきりに
「今絶対にぶたれた」
と喚きだした。
勝手に転びそうになって怒り出すA子に呆気に取られていると、A子が
「痛い痛い痛い!誰かぶってる!!痛い痛い痛い!」
と騒ぎ出した。
その姿は嘘をついているようには見えず、私達はA子が怖くなり逃げ帰った。
A子は帰ってから頭が痛くなり、怖くなったのか私に電話をしてきた。
そして昼間の光景で呪われたと思ったので
「大きな声でもう一回言い直した方がいいよ」
と伝えた。
夜になって親との豆まきの際、A子は稲荷神社で謝罪しながら昼間より大きな声で正しい「鬼は外!」といったら頭痛が治ったと言っていた。A子の親も同じことを言っていたので嘘ではないと思う。
あの時訂正をしないままだったらA子はどうなっていたのかとほんのり……。