何年か前の盆、俺は一人で墓参りに行ったんだ。
家族が墓参り行くときに風邪引いてたから、一人で花と線香、
水をチャリのカゴに乗せてね。
ポケットにはおばあちゃんが大好きだった飴玉と、
チロルチョコを幾つか。
墓地に到着した俺は、おばあちゃんの墓に水をかけて、
花を変えて、花を入れてるとこに水を入れて、と
いつも通りのことをやった後、線香に火を付けて立てかけて、
拝んだ。
その後、飴玉とチロルチョコにシールを貼ったやつを供えて、
帰った。
シールを貼ったのは、もしもおばあちゃんがこれを見たときに
「俺が供えたんだ」と解るようにというしょっぱい思いやりからで、
ゲーセンでよくあるプリクラの、俺の顔の写ったシールを貼っていた。
その帰り道、俺は信号無視の車と衝突事故を起こした。
救急車を呼べ、警察を呼べの大騒ぎになったが、不思議と
俺はほとんど無傷で、かすり傷が何カ所かあるぐらいだった。
到着した警察も不可思議に思ったらしく、色々事情を聞かれたが、
俺にも詳しいことは解らず、ただ信号無視した車の運転手の
事情聴取とかを待たされた。
その待ってる最中、俺が事故に遭ってから倒しっぱなしの
自転車のカゴに何かが入っていたのに気付いて、
俺はそれを確認しにいった。
墓地を出るときは何も持たず、カゴの中身も何もない
状態だったから、無性に気になったのも相俟ってだった。
自転車のカゴには、中身のなくなった飴玉とチロルチョコの
外装があった。
その外装には、おばあちゃんの墓に供えたやつと同じ、
俺のシールが貼ってあったんだ。
その後病院に検査に行かされ、病院を出てから真っ先に
ばあちゃんの墓を見に行ったら、俺が供えていた飴玉と
チロルチョコはなくなっていた。
この事があってから、俺は毎月おばあちゃんの墓参りを
欠かさなくなった。
勿論、飴玉とチロルチョコも忘れない。
おばあちゃんが助けてくれたのか、全くの偶然かは解らない、
ちょっと変わった話でした。