あんまり怖くはないが、興味深い話。語り口調がウソっぽくなるのはご愛嬌
ちなみに聞いた事実と、内容だけはオカ板にありがちな創作ではないとあらかじめ断れます
岩手の内陸部、紫波町に住む知人の話
その人の家には御社が祀ってあるという。それがその知人の氏神的なものなのか、
それともその知人が御社の守りなのかは知らないが、おそらく後者であろうという
その後ろはすぐ山で、御社はその山肌からせり出した大岩の下に祀られているそうだ
その御社は年に一回祭りの日がある。その祭りというのがおかしなもので、
その家の嫁がリーダーとなり、近所の女性だけが集まって、女だけの祭りをやるのだそうだ
女性が祭祀から遠ざけられることは珍しくないがその逆となるとちょっと珍しかろう
祭りがどんな内容なのかは聞かなかったが、特に特殊な儀式をやるとは聞いていないので、
せいぜい飲み食いしながら談笑する程度のものであるものと思われる
しかしとにかく、その家ではそのお社の祭りを女性だけでやるのだそうだ
そして、この祭りにはある約束事がある。その家で不幸があった年はその祭りは自粛せねばならぬのだそうだ
特に、昨今亡くなったその家の主であった舅さんというのが、自分が老いて死ぬまでずっと
「その約束事だけは守らなければならぬ」と言っていたそうである。なにか事情があるのかも知れぬ
しかし、その舅とやらが亡くなった年、その家の嫁さんが「祭りをやろう」と言い出したそうだ
「やってはならない」と言われているのに「今年もやる」と言い出したのだからなにか不思議ではある
祭りなんて準備も始末も面倒だからやりたくない、というのならわかるが、嫁はとにかく「やる」と言って聞かなかったそうだ
何か別な理由や何らかの下心があったのかもしれないが、それについてはこの話の話者ですら知らぬと聞いた
結局、その年も祭りは行われてしまった
そして、その祭りの日の夜、嫁が不思議な夢を見た
亡くなったその家の主、舅さんが、社の裏の大岩に腰掛けて、嫁をじっと睨むように見下ろしていたのだそうだ
夢の中の嫁が絶句していると、舅がたった一言、重く口を開いたのだそうである
「俺な、お前のことをずーっと見ているからな」
その日から嫁は少しずつ可怪しくなり始めた。精神が不安定になり、常に何かにビクビクと怯えて、
ついには喚き出す泣き出す錯乱するの有様となり、ほとんど外出もしなくなって現在では家に閉じこもりだそうだ
それが祟りだとするのなら、御社の祭神の祟りなのか、それとも舅の祟りなのか、話者は愚かその家の人すらわからないという
ただ、その嫁というのは、家の裏のあの社と大岩が見える窓を見ると、必ず慌ててカーテンを締めるのだという
ただそれだけの話。怖くはないが興味深い話