怖い話

【恐怖体験談】山小屋で遭遇した不気味な女

255: 本当にあった怖い名無し 2011/10/01(土) 21:33:13.44 ID:BxN9IQCP0

20131127c

今年の夏、今までの人生で一番怖い体験をした。
最初は誰かに話すなんて考えられなかったけど、
だいぶ落ち着いてきたので投下。

引用元: 死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?281


自分の家は中国地方の山奥の田舎にある。
俺はそこでちょっとした自然愛護のクラブに所属していて、
いろいろイベントを企画したり参加したりしていた。
家から車で20分ほどの所に「○○さん」と呼ばれる山があるんだが、
主にその山を舞台にしてクラブのメンバーで登山や、キャンプなどを催していた。

その○○さんで近々、一般の参加者を募って、クラブのメンバーで
山のガイドをしよう、という企画が持ち上がった。
○○さんの魅力と自然の美しさを、もっと地元の人に知ってほしい、というのが発端。
俺はその企画に賛同し、イベントの下準備などを受け持つことになった。

俺の担当は必要な道具などの準備と、ガイドする場所の選定。
何度も上った山だけに案内はほぼ熟知しているが、
やはり一度山に行って実際に歩きながら考えようと、
休日に一人で○○さんへ向かうことにした。

その日は良い天気で、絶好の登山日和だった。
俺はデジカメを片手に、要所要所でガイドのパンフで使う写真を撮りながら、
純粋に登山を楽しんでいた。

そうして、目標地点まで半分あたりに来た頃。
湧き水の出る休憩所で一休みしていると、少し天気が翳ってきた。
帰ろうかと思ったが、イベント当日では、もっと上の方まで上がる予定だ。
もう少し歩いて、天気が荒れそうなら引き上げようと、荷物を持ち直す。
と、
「―――……」

256: 2/7 2011/10/01(土) 21:35:22.73 ID:BxN9IQCP0
「?」
何か聞こえた。
人の声みたいだったけれど……と、周りを見渡す。
自分が歩いているのはちゃんとした登山コースだ。別に人と遭遇しても
何もおかしくは無いが、前にも後ろにも人影は無い。
風の音が人の声のように聞こえただけか……と思い直して歩き出すと、

「―――……」

また聞こえた。
聞こえてきた方は、コースからは外れた藪の方からだった。
男とも女ともつかないが、か細く、弱弱しい感じの声。
「誰かいるんですかー!?」
もしかすると怪我でもした登山客がいるのかと思い、声を張り上げた。

だが、返事が無い。
少し躊躇ったものの、藪の中へ向かってみることにした。
気のせいならそれでいい。けれどもし助けを求める人の声だったらと思うと、
確認せずにはいられなかった。
「誰かいるかー!?」
声を上げながら進んでいく。
藪は小柄な人ならすっぽり隠れてしまうほど高く、もし人が倒れていたら
発見は困難だろう。
藪を掻き分けながら注意深く周りを確認して進んでいくと、唐突に、
開けた場所に出た。

そこは、自分も初めて見る場所だった。
あれだけ密集していた藪が急に無くなり、湿った土の地面に、
ぽつぽつと木が等間隔で生えている場所。
それらの木には注連縄?がついており、その木々に囲まれるように、
朽ち果てた木造の小屋のようなものがぽつんと建っている。

257: 3/7 2011/10/01(土) 21:37:09.37 ID:BxN9IQCP0
それはどこの家にもある、物置小屋のように見えた。
俺はしばらく言葉を失い突っ立っていたが、

「―――……ょ」

またあの声が聞こえて、ハッと我に返った。
この先の小屋の方から聞こえた。間違いなく人の声だ。
確認しなければ……と思ったが、何か嫌な予感がした。

まず、ここは何だろう。
こんな場所、俺は知らない。今まで何度もこの山に登ったが、
こんな場所があるなんて聞いたこともなかった。
周りの木々で光が遮られているため薄暗く、どうにも不気味な感じがする。

「―――……ょ……」

それでも、聞こえてくる声は気のせいじゃない。
人がいるなら、確認しないと。
しかし大声を上げて呼びかける気にならず、息を潜めて、
足音を立てないように、静かに小屋へ近寄っていった。

……そうして小屋の前まで来て、俺は後悔した。
小屋には扉があったが、その扉にはボロボロになったお札らしきものが
びっしりと貼り付けられていた。
元は白かったのだろうが、遠目には茶色っぽく汚れていたそのお札が、
扉の色に溶け込んで見えなかったのだ。
扉には南京錠がついていたが、経年劣化によるものか壊れていて、
ぷらんとぶらさがっているような状態。
そのせいで扉が少し開いていて、隙間が出来ている。

258: 4/7 2011/10/01(土) 21:38:54.18 ID:BxN9IQCP0
「―――……ょー……」

声が中から聞こえた。
この時俺はもう泣きそうな心境だった。
普通に考えて怖い、あまりにホラーすぎる。ここから逃げたい。

その一方で、冷静な思考もあった。幽霊や怪物なんているわけがない。
浮浪者の類かもしれないが、山で迷ったか怪我でもした登山客が、
一時しのぎの仮宿としてここを使ってるとしたら。
そう、やはり確認くらいはしたほうがいいんじゃないか?……と。

どのくらい迷ったか、俺は後者の思考に従った。
扉に手をかける。
くいっと押すと、メキメキッ……と埃をボロボロ落としながら、扉が開いた。

中を覗き込むと…………人がいた。
こちらに背中を向けて、部屋の中心に立っている。
……女だ。
着物なのだろうが、まるでボロボロの白い布切れを纏ったような服装で、
頭はボサボサ、腰辺りまで伸びた白髪混じりの黒髪。
破れた着物の隙間から見える手足は、恐ろしいほどやせ細っていた。

その足元には、犬か狸か、動物の死骸が転がっていた。
まだ新しいのか、流れた赤黒い血が床を濡らしている。

「…………ッテー………テー……カー……ョー……」
その女性は、何かぼそぼそと呟いていた。
歌だろうか。聞き取れないが、一定のテンポを感じる。

259: 5/7 2011/10/01(土) 21:40:39.32 ID:BxN9IQCP0
ああ、これは駄目だ。
現実離れした光景を見ながら、俺は妙に冷静にそう思った。
見てはいけないものを見た。
関わってはならないものだ……逃げよう。
俺が一歩後ずさると、女がぐらっと揺れて、顔を左右に振り始めた。
ぶるぶる。
ぶるぶる。
ぶんぶんぶんぶん……
振り幅が段々と大きくなり、長い黒髪が大きく振り回される。

「テーーテーーーシャーーーィィカーーーョーーー。」

何を言ってるのかさっぱり分からないが、とにかく異常だった。
俺は逃げた。
全力で来た道を走る。たぶんこの時、俺は無表情だったと思う。
全ての感情を凍らせて、何も考えずに逃げる。
少しでも何か考えれば、悲鳴一つでも上げれば、正気と恐慌の拮抗が
崩壊してしまうと思った。
パニックに陥るのを阻止するための本能だったのかもしれない。
藪を掻き分けて、元の登山コースに転がり出る。
そこで呼吸を整えながら来た道を振り返ると、
20メートルほど離れた藪の中から、黒い頭が出ているのが見えた。

「―――――。」

硬直した。
頭しか見えないが、あの白髪混じりの黒髪は、さっきのあいつだ。
動かずに立ち止まっているようだが、追ってきてる?

すぐに一目散に逃げた。登山道をひたすら駆け下りていく。
走りながら、首だけで後ろを見る。
登山道横の木の陰に、白い着物が見えた。さっきよりも近くにいる。

260: 6/7 2011/10/01(土) 21:42:37.02 ID:BxN9IQCP0
また走る。走る、走る……振り返る。
木の陰に白い着物。さっきよりも更に、近い。
「ううううう……!」と、恐怖でうめき声が漏れた。

"だるまさんが転んだ"を連想してもらえば分かり易いだろうか。
走りながら後ろを振り返ると、さっき振り返った時より近い位置に立っている。
全力で逃げてるのに、振り返った時、そいつは今まで走っていた素振りもなく、
さっきよりも近い位置に立っているのだ。

もうすぐ麓の、民家がある集落へ出る。
また振り返ると、3メートルくらいの位置に立っていた。
一瞬だが顔が見えた。目元はべったり張り付いた髪で隠れていて、
口がモゴモゴ動いていた。

前を向いて、走る、走る。
もう振り返る勇気は無かった。
次に振り向いたら、俺の背中ぴったりのところにいるんじゃないか。
ゼヒュッ、ゼヒュッ、と呼吸困難寸前になりながら、集落へ。
最初に目に付いた家に飛び込み、呼び鈴を狂ったように連打した。
「誰か!!誰か!!」

俺が騒いでいると、家の中からおばあさんが出てきた。
「なんだいな。どがぁしただ?(どうした、の意味)」

俺の様子を見て驚くおばあさん。
そりゃそうだろう、いきなり大の男が息を切らしてやってきたら。

「すいません、……あの、俺の後ろ、何かありませんか?」
「…なんもあらあせんがな。」
言われて恐る恐る振り向くと、確かにあの女の姿は無かった。

261: 7/7 2011/10/01(土) 21:44:30.37 ID:BxN9IQCP0
……これが俺の体験。クラブの仲間に相談しようかと思ったが、
誰かに話すのも怖くてやめておいた。
予定していた○○さんでのイベントも、当然俺は参加拒否。

あれは何だったんだろう。
最初は詳しく調べる度胸なんて欠片も無かったが、
今はだいぶ恐怖も薄れてきた。
来年あたり、少し探りを入れてみようかなと思っている。

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