数年前に通っていた予備校に、ちょっとオツムの足りないと思われる坊主頭の眼鏡をかけた常時短パンの男がいた。(ノートに赤い彗星のシャア、蒼き巨星ランバラル、何とかの隼〇〇←そいつの名前と書いてあったため、ファルコンとする)
・何も無い空間に「ういっ!シッ!」という掛け声とともに手刀を繰り出す。
・不意に繰り出したその手刀が激しく防火扉に当たり、「もう、やーねー」と腫れた手をさする。
といった奇行から面白がられていた。
ある日、授業が終わり教室から出てくるファルコンに友人と俺は遭遇した。
次にその教室である授業待ちの高校生で廊下は満員電車のような人だかりとなっていたが、一瞥するなりそこに手刀を繰り出すファルコン。
その瞬間、もうそれ以上は詰めようのない廊下に人一人あるける程度の道ができた。高校生は怯えたような不思議そうな顔をして彼を見ている。
友人は「モーセかWW」と爆笑していたが、俺には明らかにもといた人数と通路ができた後の人数は異なっているのがわかった。
後に俺は
・その廊下が霊の通り道であること
・昔、授業を待っている間に火災が起き、すし詰めだった校内からにげられず多数の高校生が死んだこと
を知る。
しばらくしたある日、トイレから出たところであのファルコンが殴りつけていた防火扉が目についた。
「あれ?」
何か違和感を感じが、すぐにその原因に気づいた。何かのはずみで、防火扉がスクランブル時のように閉じてしまっている。
しかし窓から下の道路を見ても平和そうにコンビニ袋を提げて校舎に入ってくる生徒が見えたし、そんな騒ぎは起きていないはずだ。
建てつけか何かのはずみでこうなってしまったのだろうと結論づけた俺は、直しておこうと思い扉に歩みよった。
すると、扉の端、半分が突き出た壁に隠された部分に変なものが貼ってあることに気づいた。
黄色い星型のような…
連邦軍のシールだった。
誰がこんな場所に…と思った俺は何故かそれを剥がしていた。
数秒後、変な汗が首筋を伝った。
熱い。
夏とはいえ、クーラーがキンキンに効いた校内。そんな暑いはずは…と思うや否や、我慢できないくらい体中が熱を持ち、思わず屈み込んでしまった。
あ、熱い…!
かばんの中の教科書を書き分けてペットボトルを取り出し、焼け付いて張り付きそうな喉に少し、残りを頭から被る。
それでも全く収まらない。
そんなとき俺は防火扉がひんやりしてそうだと思ったのでひっついたら、非常に心地よかった。
それでもまだまだ扉についていない体が熱いのは止まず、俺は少しでも扉に密着しようと試みていた。
そのうち、体全体が扉の中に飲み込まれていく感覚がしていた。とても心地よかった。
「ういっし」
突然の寄生と殴られた痛みで俺は正気にかえった。
扉は目の前にあり、体を焼く熱気は消え去っている。
ファルコンが立っていた。
その後俺はかろうじてすべり止めで受かった大学でファルコンと再開することになる。
しかし何度か助けられた今の今まで、彼の発言は意味不明である。