俺が体験したトラウマ級の出来事。
俺が消防で、姉(5歳年上)がリア厨だった頃のこと。
当時は姉と同じ部屋をつかっていた。
姉は寝ぼけが激しい人で、夜中突然「刺がふってくる」と言ったり
「ピーちゃんが!ピーちゃんが!!」
と言ったりするのはよくあることだった。
幼い頃からずっとそうだったし、起きてるときは優しかったから
俺はあまり気にしてなかった。
ある冬の日、姉が熱をだした。姉はその日学校を休みずっと寝ていた。
健康な姉が寝込むのは珍しいことで、俺はちょっと心配した。
うちは狭かったし、俺はかなり健康だから大丈夫だろうとその日も同じ部屋で寝た。
眠っていると突然何かのせいで目が覚めた。初めは何かわからなかった。
だが、意識がはっきりするとそれが姉の叫び声だとわかった。
姉は叫びながら暴れていた。本棚に体当たりしたり机の上のものを投げたり。
何がなんだかわからなかった。起きてる時はしっかり者で頼りにまるはずの姉が
狂ったように暴れていたのだから。
いつもの寝ぼけとはあきらなかに違う。
姉を止めたかったけどどうすればいいかわからなかった。
少しすると姉は部屋を出て行った。俺も立ち上がり追いかけると姉は裸足で
コートも着ず家を飛び出していた。
母がやってきて「お姉ちゃんどうしたの?」と聞いてきたが俺は答えられなかった。
母は俺はあてにならないと判断したらしく、コートを着て家を出た。
数分後、母は姉の手をひいてもどってきた。姉は母のコートを着ていた。
姉は無表情で俺を見、一言。「地球が滅びるの」
母は姉の手を引いて台所に向かう。俺も呆然としたまま後を追った。
姉はイスに座らされると電波トークを開始した。
「わたしはB博士につくられたロボットなの」「地球が滅びるの」「逃げなきゃいけないの」
B博士って誰? そんなことは聞けなかった。
姉の言葉はむちゃくちゃで、理解できたのは上の三つくらい。
姉ちゃんは狂ったんだ。そう思った。
数十分後、姉の電波トークが止まると黙って話しをきいていた母がお茶を入れて
姉に渡した。
俺にも渡された。すごく美味しかった。
母は姉に「もう寝る?」ときくと姉は黙ってうなずいた。
母が姉を連れて行き、台所に戻ってくると「お母さんと一緒に寝る?」と聞いてきた。
俺はうなずいた。
母は「お姉ちゃんは寝ぼけただけよ。大丈夫だから」といってた。
俺はその夜父の布団を使って寝た。ちなみに父は出張中だった。
翌朝、姉はいつもの姉だった。部屋へいくと散らかっていた部屋は
もう元通りになっていた。
昨日の出来事はたんなる夢だったのではないか。そう思うほどいつもどおりだった。
その日は姉と一緒に寝たがろくに眠れなかった。安らかに眠る姉が怖かった。
それからも姉が寝ぼけることはあったがあの夜ほどじゃなかった。
俺が中学に上がる引っ越しをし、俺は自分だけの部屋を手に入れた。
あれから何年もたったし、俺は今でも姉と仲がいい。
けど今でも時々思い出す。あの夜の恐怖を忘れることが出来ない。