俺はオカルトが嫌いだった。
テレビで小さいおじさんを見たという話が話題になっていた時は「こいつら頭おかしいんじゃねえのか」と内心馬鹿にしていたりもしたものだ。
自称見える女はこう言う。
「小さなおじさんは妖精で、幸せを運んでくれるんだよ!」
おっさんを見ただけで通報する奴らが蔓延るこのご時世でよくもまぁそんな台詞が口から垂れるもんだと思いもしたがそこは飲み込んだ。
「その小人とやらは何がしたいんだ」
話を聞くと踊っていたとか、すぐ逃げて追いかけても居なくなるらしい。
その時ふと何かが自分の中で引っかかった気がした。しかし、それが何なのか思い出せなかったので今は忘れることにした。
ある日の深夜、俺は友人の家に押しかけた。無論寝ていた友人をピンポン連打で叩き起こす形で。
家の印刷機の調子が悪くレポートを印刷できなかったからだ。
そいつはオカルトに詳しく、それ関係の知識を吹っかけてきたから俺も負けじと反論したりしていた。話にも疲れ帰ろうかと思ったちょうどその時。
「あ、おい小人が出たぞ!」
そう言って友人は部屋を全速力で出て行き、そのままサンダルを履いて外に出て行った。
「まじかよ…」
半信半疑ではあったものの後を追うと、どうやら草むらに消えたらしい。
こっちに尻を向けながら友人は草むらを探っていた。
「で、いたのかよ?」
「待て、もう少し探す」
そんな事を話しているとふと気配を感じた。自分の後頭部の方向。真後ろより若干上から。
昔から人の顔色を伺う性格なためか気配には敏感だったが、この時ほど自身の性格を恨んだことはない。
思い切って気配の方向を見るとそこには友人の部屋の窓から明かりが漏れていた。
気配の正体が確かにそこに在った。
さっきまで自分達がいた部屋を覗き込むように黒い何かが壁に張り付き部屋を覗いていた。例えるなら仮面のないカオナシ(ジブリ)
友人を無理やり引っ張ってがむしゃらにその場を離れ、人通りの多い道路側に出たとき不意に自分が何に引っかかっていたのか思い出した。
『小人が逃げていたとは断言できない』
本当に幸せを運んでくれるかはわからない。
でも俺はこう思っている。
小人に誘われてはいけない。
小人は黒いアイツを連れてくる。