あれはもう三年くらい前になるかな。
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あれはもう三年くらい前になるかな。
俺と彼女で伊豆に泊まりで遊びに行ったときの話だ。
天気も良く西湘をドライブしながら伊豆方面へと向かった。
途中までは快適に進んだんだが、熱海を過ぎた頃からナビが
おかしくなっちまった。一応、目的地をインプットしてあったん
だが、グルグルと画面が回転している状態が続いた。
おかしいなぁ、壊れたか?
海沿いじゃなくて山越えルートにしたのは失敗だったか。
周りも何もなくひたすら1本の山道が続いているだけだった。
平日のせいか、対向車も後続車もない。
仕方が無いのでマップルを引っ張り出して、彼女にサポート
してもらう。俺も山越えルートは初めてだったんで道がよく
わからない。ゆっくり出てきたのでそろそろ夕方だ。あたりも
暗くなりつつある。
まいったな、これじゃ時間通りに宿に着かないな。
携帯を見ると思いっきり圏外だ。。。
それでもひたすら山道を進むとYの字に分かれていた。
困ったことに標識が無い。路肩に車を止め、どっちだ?と二人
で問答。ナビの現在地は八王子を指している。。。(アホナビ!)
仕方が無いので右へ進むことにした。
これがすべての間違いだった。
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あたりはすっかり暗くなり車のライトなしでは本当の闇だ。
当然ながら街灯もない。しばらく進むと車がガタガタと揺れ始
めた。あれ?この道って舗装してないのか?今どき?
しばらくの間、緩やかな下り坂をガタガタと進んで行くと今度
は三叉路に出た。標識というか、随分古い感じの案内板が立っ
ていたが字が消えかかっててよく見えない。。。
どうする?
どうしよう・・・戻る?
ここでもしばらく問答。と、その時、目の前を1台の車が横切
った。その車は三叉路を右から左の道へと受け流すように進ん
で行った。久しぶりに自分達以外の車に出会った嬉しさからか、
俺らも勢いで左の道へ急発進した。きっとあの車に着いて行け
ば街まで出られる!勝手にそう思い込んで、前をゆく車を見失
わないように進んだ。
しかし前の車、異常に速い。どこかの豆腐店並みだ。どんな車
なのかとよく見る。白いセダンだがどこのメーカーか不明だ。
よほど足回りをいじってあるのか?色々と考えていると彼女が
変なことを言い始めた。
ねぇ、あれって・・・どこのナンバー?
ん?ナンバー?ナンバーがどした?・・・
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確かにナンバープレートはあった。そして数字も書いてある。
しばらく見ていて何やら違和感を覚えた。ナンバーは問題ない
のだが、陸運局の地名?が見たこともない名前だったんだ。
何やら昔の略していない複雑な漢字3文字だ。3文字とも難し
くて読めなかった。
あんな地名あったか?九州のほうかな?
えー・・・あんな名前聞いたことないじょ・・・
(翳欝嚢 ←こんなイメージ・・・)
そんな事を考えていたせいか、気がついたら前の車が見えなく
なっていた。あれ?どこかに曲がる道でもあったのかな?
キツネにつつまれたような奇妙な感じだったが、目印となる
車がいなくなってしまい、再び不安感がこみ上げてきた。
もはや先に進んでいいのか戻ったほうがいいのか、俺達には
わからなくなっていた。ナビは所沢を指していた。。。
と、遥か先に明かりが見えた。
やった、街だ!やっぱこの道で正解だったべ?
この時ばかりはホッと安心し二人で喜んだ。そして車を進める
と、さっき見えた明かりは民宿?の灯りだったことがわかった。
俺達は道を聞くために車を止め、二人で降りて民宿の中に入った。
中には親切そうなおばちゃんがいて、抜ける道を教えてくれた。
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お礼を言い、車に乗り込むと何か聞こえる。
ん?何だ?どこからか音楽が聞こえね? え、あ、ホントだ・・・
よく見ると民宿の隣に建ってる家?から聞こえてきているようだ
った。あれじゃ近所迷惑だな、とか言いながら民宿を後にした。
でもさー、あの民宿、すごく臭くなかった?
え?そうだった?俺、全然気がつかなかったわ。
アンタ、蓄膿だからね・・・なんか生臭かったよー魚みたいな。
そっかー、客用の仕込み中だったのかな?
その時だった。
目の前を何かが横切った。咄嗟に急ブレーキ。
鹿か?馬か?ヘッドライトに照らされて一瞬見えたような気が
するがハッキリとわからなかった。しかし白い何かだというの
は見えた。そして冷や汗をかいてる俺に彼女が言った。
ねぇ・・・ねぇ・・・あれ見て・・・
ん?何?どした?
彼女の指差す前方をよく見た。急ブレーキで立ち込めた土煙が
引き、視界が徐々に開けてきた。
あ・・・・
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言葉が出なかった。
目の前には大きな岩がいくつも転がっていた。きっと落石?が
あったんだと思う。でもさっきまでそんなものは見えなかった。
山道とはいえ、ここは直線に近かったから見えないはずがない。
きっとあのまま直進していたら、岩に突っ込んで。。。
しばらく彼女と口をあけてポカーン・・・
その時、車の後ろに人の気配がした。
バックミラーを見ると一瞬、白い人影?が見えたような気がした。
こりゃいかんってことで、すぐにもと来た道を引き返した。二人
ともさすがに只事ではないということを感じていた。もうどうして
いいかのさえ分からなかった。
恐怖に引きつりながら進むと、さっきの民宿の灯りが見えた。
助かった、とりあえずあそこに逃げ込もう!あまりの恐怖で髪が
全部白くなってんじゃないかと思うくらいだった。そして民宿の
前で車を止めた。
そんな・・・あほな・・・
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そこは民宿じゃなくて俺達が泊まるはずのペンションだった。
よく見ると周囲には普通に民家がある。人の気配も普通にするし
車も普通に走っている。もちろん普通のナンバーの車だ。
しばらく彼女と無言でポカーンとしているとペンションの中から
従業員が出てきて誘導してくれた。当然、その夜は気持ちの整理
が着かずに二人とも楽しめなかった。
今では彼女と、あの時は狐に化かされたのかな?と言って笑い話に
なっている。
おしまい。