怖い話

【怖い話】白い人影

902: 2008/05/23(金) 03:45:25 ID:ZOtcgECe0

20150704f
 

去年成人になり、先月は地元熊本に帰り成人式に行った。

成人式後の同窓会では懐かしい顔ぶれで、思わずはしゃいでしまった。
そんな中に、中学の頃は影が薄かったM君もいた。M君は髪をドレッドヘアに編んであり、
同窓会のメンバーの中でも一番様変わりをしていた。
だけど、M君は誰と話すでもなく、ポツネンとしていた。
M君とは、一度どうでも良い事で言い争いになった事がある。
霊はいるのか、いないのか。
M君には霊感があるらしく、中学の時から「霊はいるんだって」と口癖のように言っていた。
自分はその頃霊を信じていなかったので、ある日M君に「霊はいないんじゃないの」と
何気なく言ったら、M君は猛然と反論し、「いる」「いない」で大論争になった。
そんな言い争いが懐かしくなり、M君に声を掛けた。
中学を卒業した後、自分はちょっとした霊体験をしたので声を掛けやすかった。
最近、また霊を見た?と聞くと、見たよ、とM君はかえした。
                                   
以後はM君の体験である。

M君は工業系高校を中退した後、バイトでお金を溜め、ゲームソフトの専門学校通い始めた。
学校は福岡にあるため、実家から離れて一人暮らしを始めた。
その一人暮らし先の学生マンションで恐ろしい思いをしたという。
ある雨の日、タバコを吸おうとベランダに出たら、向かいの月極駐車場になにか白い人影が
立っているのに気付いた。
傘も差さず、じっとこちら側を見ているそぶりだった。
あ、お化けだ!
直感的にそう気付き、タバコを揉み消して、部屋に戻った。
霊に危害は加えられた事はないけれど、「虫が嫌い」というような感じで霊が嫌いであった。
カーテンを閉め、祈祷師の人から教わったという魔除の祝詞を唱え続けた。
30分程唱え続けた後、もう大丈夫だろうと思い、唱えるのをやめた。
そんな時、なぜかM君に好奇心がむくりと湧いた。
怖いもの見たさ、である。
M君は大人になるにつれ、霊を見ることが少なくなってきたという。
だから、霊はこれで見納めかもしれないと思ったのだ。

903: 2008/05/23(金) 03:47:12 ID:ZOtcgECe0
カーテンの隙間から、先ほど霊らしきものが立っていたあたりを、ちら、と盗み見た。
まだ、いた。
さっきと同じように白い人影はずっとこちらの方を見つめるようにして立っていたのだ。
あ......、やべえ。M君がそう思った瞬間だった。白い人影がすーっと速いスピードでスライドするように
M君のマンション側に向かってきた!依然と顔はこちらに向けたままである。
M君は驚き、半ば叫ぶように再び祝詞を唱え続けた。
白い人影がクモのようにマンションの壁を這い登る所を想像し、ゾッと鳥肌が立った。
やばい、どっかに逃げよう。M君はそう思い、カーテンの方を見ないようにして財布を捜した。
ネットカフェに逃げ込もうと考えたのだ。
だが家を出る時、不運な事にM君の視界にカーテンの所が入ってしまった。
カーテンの隙間から、白い人影が見えた......。
                  
「大変だったね」話を聞いてM君を慰めた。
だが、M君の話によると、起こった事はこれだけではないという。
                  
しばらくは恐ろしくて自宅マンションには帰れなかった。なのでM君は4日間程ネットカフェと
友達の家で寝泊まりしていたが、やはり自宅には帰らなければならない。
そこで神社からお札と御守りを買ってから自宅に帰った。
マンションの部屋に入ると、部屋を出た時となんら変わりもなく、ほっとした。
M君はベランダの入り口に買ってきた御守りを置き、四隅に盛り塩をした。
それからというもの怪異は起きず、今まで通りの生活になった。
盛り塩はほったらかしになり、カチコチに固まってしまっていたという。
そして、心霊現象が起きた事などすっかり忘れたある日の事だった。
M君は飲み会で夜中の3時に帰宅した。
M君は特に変わった事をするでもなく、ふらふらしながら自転車を止め、郵便物を確かめて、
エレベーターでいつも通りに我が家の玄関の扉の前に辿り着いた。
そして鍵を取り出して、玄関の鍵を開ける。
ここまでは、いつも通りであった。
M君は玄関の扉を開けた。その瞬間、なぜかM君は気を失ってしまったのである。
気がつけば、朝になっていた。

904: 2008/05/23(金) 03:49:03 ID:ZOtcgECe0
「一体なにがあったの?」
M君に聞くと「それがさっぱりわからん」とあっけらかんに答えた。
ただ、その後部屋に入ると、明らかな異変が起きていたとM君は語った。
ほったらかしにして置いた盛り塩が、器の小皿だけ残して跡形もなく消え去っていた。
そして、ベランダ側に置いていた厚い御札が、真ん中から折れ曲がっていたという。
そしてM君は最近まで、「玄関の扉を開ける」夢を見ていたそうだ。
酔っ払って帰り、玄関の扉を開けると、暗いすぐその先に誰かが立っている。
裸で、全身真っ白な肌をした男。
その男の顔は、目と口の辺りに、ただ丸く黒い穴が開いただけの奇妙な顔だ。
鼻や眉毛などのパーツは一切ない。
                  
その後、なぜかケガがやたら多くなり、不運な事も立て続けに起きたので、そのマンションから
引っ越したそうだ。
「引っ越したとこ、マジ快適だよ(笑)」M君はそう言って笑った。               
(おわり)

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