引用元: ・死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?287
その瞬間、女の子が体全体でこちらに向き直り、
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
と飛び出さんばかりに眼球を開き、顎が外れんばかりに口を開き、
いつもの女の子とはとても思えない鬼女の様な真っ紫の表情で絶叫していた。
俺もたまらず絶叫し、箒を放り投げて教室に駆け戻った。
やがてチャイムが鳴り、掃除時間は終わり俺は机に座っていたが、
その間教室でどう過ごしたかはまったく記憶にない。
ホームルームが終わり、下校の時間になると、とにかく早く家に帰りたかった。
毎日一緒に下校する友人はその日クラブ活動があり、今日は自分1人で帰る日だった。
下駄箱に通じる廊下を歩いていると、前方から例の紫の子が友人2人と歩いてくるのが見えた。
その子もクラブ活動に行くのであろう、体操服を来てこちらに歩いてくる。
視線を合わせないように小走りにすれ違おうとすると、その子がすれ違いざまに
「モウキカナイデネ」
とボソッと言った。
「もう聞かないでね」ではなく、宇宙人やロボットの真似をする時の様に、
抑揚の無い声で「モウキカナイデネ」と言った。
俺は走って校舎を飛び出した。
どう帰ったかも覚えていない。
晩御飯を食べ終わるくらいまでは、それなりに楽しく過ごした。
が、布団に入って寝る段階になって再び恐怖感が襲ってきた。
「もし明日も紫だったらどうしよう・・・」と思うと、学校に行くのが憂鬱になってきた。
親にも話せない。
ノイローゼになるかもしれない。
憂鬱な気分のまま、その日は眠った。
翌朝のいつもの登校中。
また例の女の子とその友人の後姿が前方に見えた。
女の子は普通に戻っていた。
安堵した瞬間、なぜか涙が出てきた。
一緒に登校している同級生たちに不思議がられ、からかわれながらも、
嬉しくてしばらく涙が止まらなかった。
女の子とすれ違う瞬間も、まだ少し恐々とした気持ちで顔を覗いたが、皮膚の色も通常に戻っていた。
「おはよう」「おはよう」と普通に挨拶をかわした。
以後、卒業するまでその女の子が再び全身紫になる事は1度もなかった。
あの日の事も2度と聞く事はなかった。
一体あれは何だったのか?「もう聞かないでね」と言ったと言う事は、
少なくとも女の子自身も紫色になっている自分を自覚していたと言う事なのだろうか・・・
この話は、思い出すだけでもトラウマだった話であり、
その後もたまに夢でも悪夢として何度も出てきていた。
ようやく最近になって、様々な環境や価値観の変化、時の問題もあるかもしれないが、
ようやく人に話せるようになった封印していた話である。
紫色になった女の子も、今は結婚して幸せに暮らしているようだと、人づてに聞いた。
今でも、街でもたまに見かける、白髪を紫色に染めたお婆さんなどを見たらドキッとするし、
X-MENと言う映画に出てくる、確かミスティークとか言う全身真っ青な女キャラも最初見た時、
あのトラウマが蘇り、当初途中で見るのをやめた程だった。
そんなお話でした。
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