これは、私が28歳頃に体験したお話です。
その日、私は一人で出かけておりました。図書館へ行ったり買い物に出歩いたりしているうちに、家へ帰ってくるのが、夕方ごろになりました。様々な場所へ出かけたので、その時、疲れを感じてベッドに横になったのを、今でもよく覚えております。
疲れに体を支配されていた私は、少しだけ仮眠を取ろうと思い、ベッドに横になりました。そして、目を閉じ、何気に右側を向きました。
すると、そこに着物姿の女性がはっきり、くっきりと見えたのです。瞼の裏に、くっきりと鮮明に着物姿の女性が白黒で見えたのでした。
不思議とその女性は怖くない雰囲気だったのですが、でも正直なことを言うと、幽霊が苦手な私は、ちょっと怖かったのを今でも覚えております。
女性は、着物の帯に四角い形の帯留めをつけており、それが私の瞼の裏に、くっきりと映っておりました。その霊の女性は、私のベッドの右わきに立っていましたので、ベッドに横になっている私からは、着物の帯の位置から下しか見えませんでした。その時、女性は霊なのですが、生きている人間と同じぐらいの女性の身長だったと、あとで分かりました。
このまま目を閉ざしたまま、上を見上げてみれば、女性の顔も分かったと思うのですが、そうすることが怖くて、できませんでした。もし、顔を見て、とても怖い表情をしていたら、と思うと私には、とても女性の顔を見上げるその勇気が持てませんでした。
それから少しして、疲れていた私は、そのまま眠りについてしまいました。
あとで考えてみると、その日はお盆の初日だったのです。お盆になると、よくご先祖様の霊魂が返ってくると言われるのですが、それはどうやら真実のようだと、その時に思いました。
その日、お盆に返ってきたご先祖様が、なぜ、私に姿を見せたのか分からず、また何を訴えたかったのかも分からなかったのですが、お盆になると本当にご先祖様なるものが家に返ってくる、という事が分かった新鮮な体験でした。