これは、俺が高校に入ったばっかの頃の話。
入学式後のホームルーム、まぁ自己紹介やら何やらを済ませて簡単に終了した。
ちなみに俺の入った高校は田舎なので生徒数も少ないし学力も普通。
だから、特に目立つ奴もいない。いきなり騒ぐような目立ちたがり屋なら沢山居たけど。
帰りの支度をしてた俺に、背の高いクラスメートが話しかけてきた
「な、お前さ。俺と友達になろーぜ」
超フレンドリーだった。
ただ気になったのは、目つきが異常に悪い事。
一重の目は吊り上がっていて、正直性格悪そうに見えた。
「ああ…うん」
とりあえずそう返事したその日から、そのクラスメートは俺に絡んでくるようになった。
そいつは加宮って呼ばれてた。周りからは結構人気もあって、成績もまぁまぁ良いらしい。
そんな奴が何故俺に「友達になろう」などと言ってきたかのかはまだ分からなかったけど。
それから一週間ぐらい経って、加宮が俺にメールしてきた(メアド交換は済ませてた)
『近くに共同墓地あるだろ?今使われてないとこ。明日いこーぜ』
加宮の他に仲の良い奴はあまりいなかったし、とりあえず了解した。
で、次の日。放課後にチャリで飛ばして(部活はさぼった)墓地に着いた。
そこでようやく、俺は目的を聞いてみる事にした。
「なんで墓なんか来たんだ?夏でもないのに」
「いーだろ別に。ただ、お前みたいな奴がいたからだって」
お前みたいな奴。なんとなく理解した。
コイツは、今まで少しでも見える奴と会った事がないのか。
俺に絡んできた理由がやっと分かって、少しスッキリしたけど。
墓に入った瞬間、いきなり見えた。正面の墓の上に、ぼやーっとした黒い人影。
「う」
なんでだ。墓に来た程度じゃいきなり見るはずないのに。コレも、そこまで凄そうな奴じゃないのに。
「ひょー、すげえ!」
加宮が騒いでいた。ひょっとして、コイツも見えてんのか?
「お前も見えるのか?」
「ちげーよ、オレは普段は全然見えねーの、呼んじゃうだけで」
呼んじゃうだけ。そうか、コイツのせいで普段より見えやすくなってんのか。
「でもオレは、お前みたいに『見える奴』が一緒にいれば見えるようになるんだよ」
「それで俺と来たのかよ!」
「うん」
その後は、一言で言えば地獄。
普段ならたまにしか見えないはずのモノがうじゃうじゃ居るんだから気持ち悪くて仕方無かった。
加宮はと言えば嬉しそうだったけど。
コイツといると俺に悪影響が出る事はしっかり理解したが、次の日からも加宮は俺にべったりだった。
せめてもうちょっと頼りになる奴だったら良かったけど、まぁ贅沢も言えない。