随分、昔に体験した話です
うる覚えですが、よろしく
いつの頃だったか
俺がまだ関西にいた頃の話
たぶん、小学校の夏休みだったと記憶している
丁度、季節はお盆あたりか?
父親の友人の誘いで、家族で四国は香川県に遊びに行った時のこと
讃岐うどんが美味しい所で有名なのだが、もちろん海も綺麗で小さかった俺は
真っ黒になるまで、水と戯れていた
民宿は2階の一室で、窓からは海が一望できるいい部屋だった
深夜、両親と弟がスヤスヤと寝静まっている頃、俺は疲れもあったのに興奮して眠れなかった
布団から顔を出して、ボーっと海を眺めてた
とても月明かりが綺麗で、水面がきらきらとたなびいていた
海が一望できるといっても、砂浜ではなく手前にテトラポッドがあって
おそらく夜釣りなどができるのであろう、その向こうに海が見えるといった具合だ
しばらくボーっとしてると月明かりの中に数人に人影を見た
1.2.・・・5、6人?
なにか黒い人影がひとかたまりに何かを囲んで見下ろしてるみたいだった
「なんだろ~??」
そのまま、ぼーっと見ている内に目が覚めたら朝だった
一階へ降りて、ささやかな朝食をとり少し休憩をとっていた
俺はかき氷が食べたくて、親にせがんで旅館内にある売店でブルーサワー味を頼んでご機嫌だった
両親は旅館の人となにやら話しこんでいた
ふと、見ると壁に不思議なお札を見つけた
千手観音?みたいな風体で顔がたくさんあって、中心にドーンと凡字みたいな文字が刷り込んであった
なんか面白いデザインだなーと思いつつも、ちょっと不気味にも感じた
「あっ、そういえばー、おかあさんー」と、昨日の夜の海の話を切り出した
すると話が途切れ、一瞬、シーンとしてしまった
「あっ…」子供心に話の邪魔だったかも…と俺はしょんぼりとしてしまった
なぜか旅館の人が真っ青な顔をして俺を見ていた
なんだろう??
すると、横からおばあさん(おそらく経営者の母)が出てきて、俺に
「見られなかったろうね?」と俺の腕をギュッーっと締め上げた
体を焼いた肌がヒリヒリと痛かった
「何が?」と聞くと、また
「見つからなかったろうね??」と鬼気迫る表情で凄んできた
「う、うん…気がついたら朝やった」と言うと、大きくふう~っとため息をついて
「よかった~…」と言う
なんのことだか解からない
「おばあちゃん、あの人たちってなんなの?」と聞くと
「あれはね、『七人ミサキ』って言うんだよ」
シチニンミサキ??
「ほら、あの壁ををごらん?」とさっき俺が見ていたお札を指差した
「全員で7人いるでしょう?」
1・2・・・7・・・ほんとだ
「あのお札はね、七人ミサキの象徴なのよ」と
更にこう言う
「あれに見つかったら、あの世へ連れていかれる所だったんだよ!」
俺はぞ~~っとした
しばらくたった頃か?、旅館へ飛び込んできた男が叫んだ
「おい!○○さんの死体が上がったぞ!!」
一同、騒然とした事態になった
俺も好奇心はあったが、連れて行ってくれるハズもなく…
○○さんとは地元の漁師だそうだった
2日ほど前から、漁に出たまま帰って来なかったそうだ
「あんな泳ぎの達者な人がね~…」
と、旅館の人は言っていた
見つかった場所はというとなんと昨夜、俺が見た堤防だったそうだ
じゃあ、あいつらは一体…
でもあの時は、確か6人だった
後に知ったのだが、なんでも七人ミサキとはその辺、近辺で伝承されている妖怪?だそうだ
いつも七人で連れ立っていて、新しく一人加わると先の一人が仏となり、七人を誘い殺すまではみな成仏できない
だから、七人の溺死人が成仏するためには、別の新たな七人の犠牲者がいるというわけだ
「七人ミサキ」は誰も祀るもののない亡霊が怨霊となり、生きている人に祟りをなすというものであるらしい
あの時一言、おばあさんが呟いた言葉 …
「気の毒に…連れてかれちまったか…」
あの言葉が今でも耳に焼き付いて離れない