何年か前に山奥にある実家に帰った時の事。
家にいても特にやることもなく、近くの自販機まで
ジュースでも買いに行こうと思った。
時間は午後7時ぐらい。冬だったのでもう辺りは真っ暗だった。
普段、都会で暮らしていて忘れていたが、田舎の夜道は
恐ろしく暗い。
外灯の光が点々と道を照らしているが、光が届いていない
ところは自分の足下も見えなかった。
数本目の外灯を過ぎて、次の外灯を見ると光が届くギリギリの
所に2本の灰色の棒の様なものが立っていた。
近づいていくうちに、その棒が人の足だと気付いた。
ふくらはぎから下の部分。足首で折り返した部分がレース状に
なっている靴下を履いている。
マジックテープで止めるタイプのスニーカーの踵がこちらを
向いていた。
暗いと言っても、まだ7時。子供が立っていても別に不思議は
ないと思った。
ただ、少しづつその足がある外灯に近づいていくが、
ふくらはぎ以外の部分が見えてこない。
外灯の光が届かないふくらはぎから上部分はまったくの
闇のままだった。
その外灯まで数メートルまで来たところで、踵を向けていた
スニーカーがこちらにつまさきを向けるような動きを見せた。
その後、俺は全力で走って家に逃げ帰ったので、
あれが生きていた人間かどうかは分からない。
家族に、あの外灯辺りで事故か事件があったか聞いてみたが、
特に何もないらしい。
ただ、外灯が立っていたところは、雑木林を切り開いただけの
ところで、周囲に人家はなく、俺が見かけた年頃の子供は
いるはずないとのことだった。