体育教師から聞いた話
その体育教師(以下T)が担当していた学年の修学旅行に
行った時、その他の教師数名と交代で夜の見張りをする事になった
見張りと言っても見回りなどはしない
待機場所で生徒が騒いでいるのが聞こえたら注意しに行ったり、
夜中急に体調が悪くなった生徒が助けを求めに来るくらい
Tの担当時間の午前2時頃、Tのいる部屋の真上から
スー…バタンッ!スー…バタンッ!と引き戸を開け閉めする音が聞こえた
スー…バタンッ!、スー…バタンッ!
何度も何度も引き戸を開けては閉めを繰り返しているようだった
Tは上の部屋に泊まっている生徒がふざけているのだろうと、
すぐに注意に行こうとした
「T先生?どうしました?」
同室で寝ていた他の教師が目覚めてTに訊ねた
「上の階のやつらがふざけて音たててるんですよ。
今から注意しに行こうかと思いまして」
「音?…音なんて聞こえませんよ」
その教師が目覚め、Tと会話している間に物音はやんでいた
上の部屋の生徒ももう寝る事にしたのかもしれない、
このまま物音がしなければ朝食の時間にでも叱ってやろう
そう思いTは担当時間を終え床についた
そして朝食の時間
「お前ら昨日、夜中の2時頃ふざけて騒いでただろ?」
「は?2時?いえ、みんな0時には寝てましたけど」
「うそつけ。昨日、夜中に部屋の戸を開け閉めして遊んでたの、
俺は聞いたぞ」
「えー…あー、じゃあ誰かがトイレに起きたのかもしれませんね。
寝ぼけてたから戸を開ける時とか、勢いが強かったのかも」
そんなわけない、戸の開け閉めの音は数十秒間繰り返し続いていた
こいつらとぼけてるなと思いつつ旅館を出る時間になった
Tを含む教師たちは生徒の忘れ物がないか泊まった部屋を
確認しに回る
Tはたまたま音がした部屋も回る事になっていた
扉を開けて、驚いた
その部屋に引き戸は存在しなかった