少し長文ですが、最近結婚した大学時代の友人Aの話です。
梅雨明けのある夜、Aは寝ようとしているときに、どこからか、
香水の匂いがすることに気付いた。
甘くほのかに桃のような感じがする匂いだった。
Aは香水を持っていないので、開けている窓から匂いが
入ってきたか、自分の持ち物に、たまたま誰かの香水が
移っただけだと思い、気にせずに寝た。
ただ、その日の後から、大学にいるときや、買い物をして
いるときなどに、あの晩と同じ匂いがするときがあり、
週に何度かその匂いがした。
Aは香水に興味がなく、友人も香水を使わない男友達
ばかりなので、香水については良く分からないが、
おそらく流行っている香水なのだと、考えていた。
大学にいるとき、買い物で外に出ているとき、たまに自室で、
匂いがする日がつづいていた。 そんな、ある日コンビニで
買い物をしていると、その匂いがする香水をつけている
女の子に出会った。女の子は、コンビニの店員で、地味で
大人しそうな感じの子だった。
Aは、やはり、あの匂いは香水のものだったのだと、
一人納得した。
次の日、大学の講義の際、例の香水の匂いがし、周りを
確認して見ると、コンビニの女の子がいた。Aは同じ大学に
通っていたのか、ひょっとしたら、今までの匂いの元の多くは、
彼女の香水だったのかもしれないと思った。
Aは、その事を確認するため、大学や、外出先で、例の
香水の匂いがするたびに、周りを見渡してみた。
すると、予想通り、例の女の子がいた。Aは匂いの元がわかり
安心感を得た。
匂いの元が彼女であることが確認できた後も、Aはゲーム
感覚で、匂いがするたびに、彼女を探してみることをつづけて
いた。
そんなことをつづけていると、女の子側も自分を見るAの
視線に気づいたようで、ある日、匂いがしたときに、Aが
女の子を見つけた瞬間、女の子もAの姿を確認し、
すぐに逃げるようにその場を去って行った。
Aは、自身は軽い遊びのつもりで、彼女を探していたが、
見方によってはストーカーか何かと勘違いされてしまう行為
だったかもしれないと、そのときになって気づき、後悔をした。
その次の日、Aが大学で講義の開始を待ちながら、昨日の
ことを悩んでいると、急に隣から例の匂いがした。反射的に
目をやると、女の子がおびえた表情でAの隣に立っており、
「なっ、なんで、わたしのことを見ていたんですか?」
と、震えた小さな声で聞いてきた。
Aは驚き、誤解を招かないように何かを言わなければならない
と思ったが、
「いい匂いがしたからです、」
と、混乱していたため、余計誤解を与えかねない返答を
してしまった。
しかし、その返答を良い方向に捉えてくれたのか、
女の子の表情からおびえが消え、
「気に入っている香水なんです。」
と、安堵した顔で答えた。
それから、Aの隣に座り、香水について、気に入っている
理由や、入手方法などを講義が始まるまで説明した。
このことがきっかけとなり、その後もAと女の子は一緒に
講義を受けるようになり、大学や外出先で話すようになった。
女の子は、Aと別の学部の同級生で、Aの住んでいる
アパートの近くに住んでおり、コンビニではアルバイトを
していて、生活圏はほぼ、Aと一致していた。やがて、Aと
女の子はどちらが告白したわけでもないが付き合うように
なった。
Aが女の子と付き合うようになってから香水について
知ったことと、気づいたことがある。
知ったことは、香水の匂いは、つけている人と近い距離に
いない限りは、簡単には移らず、移ったとしてもすぐに
消えること。
気づいたことは、Aが初めて匂いを感じた日は、
ベッドに入ってから長時間匂いがしていたこと。
以上です。横に長くなってしまい申し訳ありません。、
結局、Aは香水の女の子と結婚しました。