その日は修学旅行初日で、空港からいくつかのチェックポイントを班行動を行動をしながら探し出し、最終的に先生達の待つホテルにチェックインするという日程だった。
私たちの班も道中ソフトクリームを食べたり土産物屋に寄ったりとそれなりに満喫しながら特に何の問題もなくホテルにたどり着いた。
まぁ、この話の本題はそのホテルについてなんだ
そのホテルは市街地のど真ん中、しかも左右を活気のある店に挟まれている賑やかな区画に建ってた。
でも何だかおかしかった。
実際そうだったのか曖昧な部分もあるけど、その日はひどく晴天だったのにそのホテルの周りだけ曇り空に見えるぐらい空気が重くてどんよりしてた。
それくらい気味が悪かったんだ。
同じ班の友達は「うわー…ボロい…」とは言ってたけど気味悪がってはいないみたいだった。
本気で「ここに泊まりたくない」って思ったけど流石にそんなわがままが許されるわけないし、私はしぶしぶホテルにチェックインした。
建物内部の総合的な感想を一言でいうなら「暗い」の一言に尽きた。
廊下も部屋も、ロビーですら暗かった。
私の宿泊する部屋は五人部屋(他の部屋は四人部屋だった)で、ここもうんざりするくらい暗かった。
部屋の窓は一般的なレールのついた窓じゃなくて、窓の下の方についたレバーを押すとガラスが向こう側に開くタイプの窓?だった。うまく説明できなくてすまない。
飛行機の中で「一日目のホテルはね~、明るくてすっごく綺麗だったよ~」という話を友人から聞かされていた私は当時の画像加工技術を心の底から呪ったよ。
ダラダラ書くと長くなりそうだからこのホテルでの事件を私の部屋で起こった二つに絞ることにしようと思う。
逆に言えばこのホテルで一晩のうちにそれだけの事態が起こったってことになるんだけどね。
一つ目の事件は入浴時間中に起こった。
入浴は部屋のユニットバスで一人ずつ順番に入るよう言われた。
私の部屋は人数が多いから順番が来るまで時間がかかったから、みんなでテレビを見ながら時間を潰してた。
すると急に「キャーーーーーーーーーーーッ!!!」という鋭い悲鳴が浴室の中から聞こえた。
あまり大きい悲鳴ではなかったけど、びっくりした私達は入浴中の友人が転んだりでもしたのかと浴室のドアを開け放った。
でもそこには誰もいなかった。
電気すらもついていなかった。
訳が分からず私達がお互いの顔を見合わせていると、部屋のドアが開いて入浴中だと思った友人が入ってきた。
「え…みんな、何やってんの…」
「あんた…風呂入ってたんじゃないの?」
「あー、タオルとか準備してたらさっき班長会した部屋に筆箱忘れてきたのに気づいて取りに行ってたわ。ごめんごめん」
私「じゃあさっきの悲鳴はあんたじゃないってこと?」
友「…悲鳴って何?」
私「…………?」
という具合なのだった。
浴室のドアは部屋の入り口の真ん前にあり、テレビに注目すると完全に死角になる場所にある。
なので彼女が部屋を出たことに誰も気付かなかったんだろう。
じゃああの悲鳴は一体何だったのか。
廊下から聞こえた声ではないか、とも思ったがそれにしては嫌に鮮明だったし、何より廊下には生徒が粗相をしないように監視役の先生が二人いたにも関わらず、何の音沙汰もなかった。
二つ目の事件は私と友人が部屋に二人でいたときに起こった。
入浴も夕食も終わり、消灯までの自由時間に私と友人は部屋で漫画やアニメの話をしていた。
お互いがお互いに当時ハマっていた作品をすすめ合ってかなり話に熱中していた。
二人は私のベッドに裸足で上がっていた。
ベッドの位置は部屋の中でも一番入口に近い場所で、寝転ぶと頭の方に窓、足元に浴室と部屋の入り口がくる位置にあった。
多分某海賊漫画の話をしていた時だったと思う。
どこからか急に「う…う………うぅ…」という女性のうめき声のような声がはっきり聞こえた。
問題の、浴室の方から。
私と友人は話すのをぴたりと止め、二人でただ浴室の方を見つめていた。
つけっぱなしにしていたバラエティー番組の音声が嫌に白々しく、遠くに聞こえた。
逃げ出そうにも部屋のドアは浴室の向こう側にある。
どうすることもできずに凍りついてる私たちの目の前で、浴室のドアが、ほんの数ミリ開いた。
友人が息を飲んで私の腕を掴んだのを痛いぐらいの力で掴んだ。
「たーだいまー!!!!!」
そのとき部屋のドアが開け放たれて、ほかの部屋に遊びに行っていた友人三名が帰ってきた。
浴室のドアを邪魔そうに閉めると、他の部屋で恋話をしていただの男子の部屋にいってただのと楽しそうに話し始めた。
私たちはそのままへなへなとベッドに崩れ落ちてしまった。
とりあえず私の身に起こったのはこの二つなんだ。
他にも別の部屋では窓が一晩中ドンドンと叩かれているような音を立てたり、最上階なのに上階から足音が聞こえたりとそれはもう多種多様な怪奇現象が勃発してたらしい…