社会人になり、皆で集まることが減ってきた矢先の出来事だった。
去年高校時代の友人Aが突然の病で他界した。
社会人になり、皆で集まることが減ってきた矢先の出来事だった。
葬式では同じクラスだった奴等の半分ぐらいが集まり、葬式後にAを偲んで皆で飲むことになった。
口々にAとの思い出や人柄を語り合い、寂しい酒を味わいながら時間を過ごした。
二時間ぐらい話し、夜もふけてきたので一旦解散し、男連中で二次会に行くことにした。
生前明るかったAのことだから、辛気くさいだけじゃあいつも浮かばれないだろ、パーッと行くか、と。
それで二次会の飲み屋に歩いて行く途中、Aと仲のよかったBがコソコソと俺に話しかけてきた。
「なぁ、皆に言おうかどうか迷ってることがあるんだけど…」
うつむき、消え入りそうな怯えた声色だった。
「あいつが倒れるちょっと前にさ、こんなメールがきたんだ…」
そう言って携帯をいじり、俺に手渡した。
正確な文章は覚えてないが、5回ぐらいのやり取りで、内容こんなだった。
『最近誰かに付きまとわれてる気がする。妙に視線や気配を感じる。外だけじゃなく、家の中でも』
『ストーカーじゃねーよ。もっとこう、おぞましい感じの』
『幽霊とは違うんだよな。殺意を持った人間の視線みたいな』
『恨まれる覚えは無いよ。でもおととい知らないリーマンに声かけられた、Aさんですよねって。
思わず会社関係の知り合いかなって思って、二三言話して別れてから、おかしいんだ』
『顔なんて覚えてねーよ。普通のリーマンだ。確かに目が笑ってなかった気がするけど、仕事上の付き合いの人はあんな目ばっかだからなぁ』
なんだこれってB聞いたら、このメールをやり取りした三日後にAが倒れた、と。
「思うんだよ、Aは死神に会ったんじゃないかって…」
Bは暗い真顔でボソッと呟いた。
俺は馬鹿馬鹿しい、死神なんていやしねーよと言ってBの背中を叩き、ふと視線をずらすと、横を会社帰りみたいなリーマンが手帳を見ながら通り抜けて言った。
「なぁ…見たか?今のリーマン、葬式にも居た。さっきの飲み屋にも。きっとAの見たリーマンはあいつだよ。死神だ、俺はそう思う…」
俺は一気に酔いが醒め、全身に鳥肌が立った。
すれ違いざまにこう言ってたからだ。
「次は○○さんだな」
個人的に本当に洒落にならない出来事だった。
今では偶然だろうって思ってるが。
本当に死神なんているんかな?