怖い話

【怖い話】大好きなお兄ちゃんを…

101: 本当にあった怖い名無し 2015/03/10(火) 21:55:01.99 ID:jnJahWj60.net

二年程前から、私は母校の高校の近くにある喫茶店でウェイトレス(兼忙しい時は厨房手伝い)として働いています。

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その喫茶店は、私と同じ様にその母校の卒業生が経営しており、
店のマスターであるその同級生と私は、元は高校一年生の時に同じクラスだった同級生にもあたります。
そんなお店なので、私以外に働いている人間もその母校のOB等が多く、夕方~夜になると先生方も顔を出して下さるので、
母校の思い出や話題にとても花が咲く、そんなアットホームな雰囲気です。

私がその喫茶店で働き始めた二年程前の梅雨の時期、四人の学生さんがお客さんとしてうちの喫茶店を訪れました。
その四人は四人とも、私の母校の学生さんの様でした。
私の母校は実は駅からかなり離れた場所に存在している為、基本的な通学手段は自転車・スクールバス・親の車での送り迎え、になるのですが、
スクールバスを待っている間生徒さん達がうちの喫茶店で時間を潰していく、という事はよくある為、私達はそんなに気にはしていませんでした。
寧ろ、その日の様に雨が激しく降る日等は、ベンチも雨を避ける覆いもないスクールバスの停留所で傘を差しながらずっとバスを待っている生徒さんの方が珍しい位です。
四人はそれぞれ好きな飲み物を注文し、思い思いに携帯でメールをしたり、ゲームをしたりしながら時間を潰していました。

それから三十分経った頃でしょうか。
うちの喫茶店に先生が慌てた様子でやって来ました。
(先生方はスクールバスに乗る生徒さんがよくうちで時間を潰しているのをご存知なので。)
どうやら、彼らが乗る予定だったスクールバスが大幅に遅れてしまう様なのです。
話を聞いてみると、この大雨でスクールバスの順路にある道の途中で事故があり、
そこを迂回して通らなければいけない為、到着時刻が大幅に遅れてしまうらしいのです。

 

102: 本当にあった怖い名無し 2015/03/10(火) 21:56:43.39 ID:jnJahWj60.net

文句を言いながらも、どうすることも出来ないので生徒さん達はそのままうちで時間を潰していくことになりました。
どうやら、その四人の家は相当遠いらしく、スクールバスに乗っても終点からまた電車を乗り継いでいかなければいけない様で、
とてもではないけれど親に迎えに来て貰える様な距離ではないのだそうでした。
五分、十分、そして三十分と時間が過ぎていく中、
彼らを少し可哀想に思った私とマスターは彼らに暖かいオムライスをご馳走してあげる事にしました。

そして、料理を出しながら彼らと色々話してみたのですが、
どうやら彼ら四人は幼稚園からの幼馴染で、高校でも四人で一緒にいたい為同じ高校を受験した、とのことでした。
(ああ、凄く仲が良いんだなぁ・・・・。)
私は心の底からそう思うと同時に、少し羨ましくも思いました。

その四人は男子一人に女子三人という内訳だったのですが、
その男子裕也君と女子の中の一人である瑞希ちゃんは中学生時代から付き合っているらしく、端から見ても分かる位仲が良く、とても幸せそうに見えました。
四人はバスを待つ間、携帯ゲームやメールにも飽きてしまったらしく、互いに悩み相談等をしていました。

新しい水を運んだ時に聞こえてしまったのですが、どうやら裕也君には妹がいる様で、
その妹さんに瑞希ちゃんとの交際を反対されている様でした。
そして、裕也君はその事を相当悩んでいる様でした。

 

103: 本当にあった怖い名無し 2015/03/10(火) 21:58:37.00 ID:jnJahWj60.net

瑞希ちゃんも大切だけれど、大切な家族である妹にも祝福されたい――。
裕也君はそう苦しんでいました。
二人は、その時高校三年生で、卒業したら結婚も考えていた様です。
ですが、幼い頃から互いだけではなく互いの家族の事もよく知り、
家族ぐるみのお付き合いもしてきた間柄である為、妹さんに祝福されないという事は相当堪えていた様でした。

そんな、重くなって来た空気を察してか、一緒にいた二人の女の子が話題を変えようと最近学校で流行っている先生の話や噂、怪談の話を始めました。
最初は暗かった裕也君と瑞希ちゃんも、徐々に笑顔を取り戻し
「そんなの有り得ないって!」
「ああ、あの先生ならやりそう!」
等、楽しく会話に参加をしていました。
そうして、彼らはとりとめもない会話に無邪気に花を咲かせていたのですが、ふと、その会話が途切れたのです。
今まであんなに楽しそうに笑っていたのに。
少し気になって見てみると、瑞希ちゃんの様子が少しおかしいのです。
先程までは溢れんばかりの笑顔だった顔が今は俯き、真下の床を見つめ、その表情を窺い知る事は出来ません。
また、床を見つめたまま、小さな声でボソボソと何かを呟いている様でした。
「・・・・・サナイ・・・・」
とても、小さな声で、しかし、はっきりと。
「・・・・・ユルサナイ・・・・」
私には、そう聞こえました。
そして、スカートの膝の上で握り締めた彼女の手は爪が掌に食い込んでいる様で指の隙間等を伝った血が彼女のスカートを赤く濡らしていました。
握り締めた拳は小さく震え、鬼気迫るその様子は先程までの彼女からは考えられない程でした。

 

104: 本当にあった怖い名無し 2015/03/10(火) 22:00:58.56 ID:jnJahWj60.net

あまりに異質な姿に、周りにいた二人は黙り込み、裕也君もどうしたら良いのか分からない様でした。
(喧嘩でもしたのだろうか。でも、さっきまで喧嘩っぽい話はしていなかった様だけど。)
本来ならば、あまりお客様の会話等に立ち入るのは良くない事なのですが、今回は自傷とは言え瑞希ちゃんは掌に怪我をしています。
私はとにかく落ち着かせて絆創膏と消毒だけでも、と近くに寄りました。
すると
「・・・・・ユルサナイ・・・・」
「え?」
「ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ」
瑞希ちゃんがバッと頭を上げたのです。
そして裕也君を射抜く様に真っ直ぐに見つめ
「ダッテ、オ兄チャン、ワタシトケッコンシテクレルッテイッタジャナイ!!!!!!」
と叫んだのです。
しかも、その声は先程までの瑞希ちゃんの声ではなく私は全く聞き覚えのない女の子の、甲高い声でした。
そして彼女は身を乗り出すと、テーブル越しに、突然の事で固まって動けないでいる裕也君の両腕を掴んだのです。
私と、その場にいた二人の女の子でその手をどうにか離そうと引っ張りましたが、
女子高生の力とは考えられない位強い力で裕也君の腕を掴んでおり、私達だけでは離す事は出来ませんでした。

すると、そこに騒ぎを聞きつけ、休憩に入っていたマスターが戻って来ました。
そして、一緒にどうにか瑞希ちゃんと裕也君を離そうと手を貸してくれたのですが。
「ウソツキ!!!ユルサナイ!!!ワタサナイ!!!」
叫ぶ瑞希ちゃんの力は余りにも強く、これはもう先生を呼ぶしかないかと思いました。

すると、そこに――
「危ない!!!!!」
ガシャァァァァン!!!!!!
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
濡れた路面にタイヤをとられたトラックが一直線に突っ込んで来たのです。
間一髪、トラックが突っ込む寸前に腕が抜けた裕也君はマスターが抱えて避けた為、
トラックが窓ガラスに突っ込んで破片での細かい怪我等はありましたが無事でした。
他の二人の女の子も、咄嗟にソファから飛びのき、離れたので掠り傷と、
飛びのいた時に近くに置いてあった植木鉢に足をぶつけた打撲だけで済みました。

 

105: 本当にあった怖い名無し 2015/03/10(火) 22:02:49.05 ID:jnJahWj60.net

ですが、瑞希ちゃんは・・・・・。
正面から突っ込んで来たトラックに撥ねられ、しかもそのまま店内で止まるまで引きずられた為、
店内の床には瑞希ちゃんの大量の血液と、引きずられた時に飛び散った内臓らしきもので真っ赤な道の様なものが出来ていました。
そして、その先にある・・・店の奥に突っ込んで止まっているトラックの真下から、瑞希ちゃんの首だけが見えていました。
「瑞希!!!」
先程までの恐怖を忘れ、裕也君は駆け寄ると瑞希ちゃんに泣きながら声をかけました。
すると、瑞希ちゃんは、今までは閉じられていた、その血を流した両目をカッと見開き、とても悔しそうな表情で
「オ兄チャンガコッチニクレバヨカッタノニ」
と、あの声で言ったのです。
裕也君は呆然とへたり込んでしまいました。
度重なる恐怖からか失禁している様でした。
すると、そこへ・・・学校の先生がやって来たのです。
(今起きた事故の音を聞きつけてくてくれたのだろうか・・・・?)
そう思いましたが、先生の口から出たのは意外な言葉でした。

先生は事故の惨状に唖然としましたが直ぐに裕也君に駆け寄ると
「小山田!!さっきお父さんから連絡があったんだが、事故でお前のお母さんと妹さんが亡くなったらしい!!至急お父さんと連絡をとってくれ!!!」
と、言ったのです。
裕也君は先生が何を言っているのか分からない様子でした。
私も、立て続けに起きた酷い出来事に、頭の処理能力を超えてしまったらしく、暫く呆然としていました。
幸いな事に学校や警察への連絡等事後処理は全てマスターがやってくれた様でしたが。
結局、あの事故がトラウマになり、私は一週間お店をお休みし、実家で静養していました。

 

106: 本当にあった怖い名無し 2015/03/10(火) 22:03:47.04 ID:jnJahWj60.net

そして、一週間後、お店に復帰した時にマスターから聞いたのですが。
スクールバスが遅れる原因になったあの事故に、どうやら裕也君の家族は巻き込まれてしまった様なのです。
雨で滑りやすくなった路面でスリップした前方のトラックと、後続のミキサー車に挟まれてしまったらしく、
裕也君のお母さんと妹さんの遺体は判別が不可能な程損傷が激しく、実際、持ち物等から身元を割り出したのだそうです。
そうして、損傷が酷かった故に特定が遅れ、裕也君とお父さんへの連絡も遅れてしまった、との事でした。

では、何故普段はいない筈の、家から離れた場所に妹さんとお母さんは車で出かけていたのか・・・・・。
それは、本当に偶然でした。
うちの母校の近くには最近、綺麗なショッピングモールが出来たのですが、
そこには、そのショッピングセンターにしかないお店や日本初出店のお店等も多く、わざわざ遠方から車で来るお客様もいらっしゃる程なのですが。
裕也君のお母さんと妹さんも、そこに来ていたらしいのです。
そうして、ショッピングの帰りに近いからお兄ちゃんを突然迎えにいって驚かせようか、となったらしいのです。
実際、その旨が記されているメールがお父さんの携帯に届いていたそうです。

そして、あれから裕也君はというと。
余りにショッキングな出来事が重なった為か、心のバランスを崩してしまい、今は心の病院に入院しているのだそうです。
彼が入院する直前、マスターは彼と会ったらしいのですが、本当に妹とは仲が良く、確かに昔、結婚の約束等もしていたのだそうです。
そして、その約束を今でも妹は大切に信じていて・・・だからこそ、瑞希ちゃんと付き合い、裏切った自分を許せなくて反対していたのではないか。
瑞希ちゃんがおかしくなったのは、事故で死んだ妹が乗り移ったからで、あの世で結婚する為に自分を連れに来たのではないか、と言っていたそうです。
私も、あの時・・・トラックから首だけが出た状態の瑞希ちゃんの顔を見てしまいましたが・・・
あれは確かに、大好きなお兄ちゃんを連れて逝く事が出来なかった妹の表情なのかもしれないな、と思いました。

 

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