実際の出来事なので、オチは全くないです。ご了承下さい。
一人暮らしの部屋を探す際、古すぎたり汚すぎる物件は嫌だったが、金銭的な問題もある。
そこで俺は、駅から遠いという事に目をつぶる事にして、なんとか見つけた。
都心まで乗り換え無しで15~20分程度の駅。駅の片方の側は、それなりに栄えているけど、
俺の住んでいる側は駅前に多少店があるだけで、すぐに住宅地が広がってる感じ。
その駅から徒歩だと40分程度の場所。
その道の途中に一風変わった五差路があった。五差路といっても、信号もない程度の道。
その5本の道の内、2本は駅方向に向かう道で、住宅・マンションも密集し、ちらほら飲食店もある。
残りの3本は駅から遠ざかる道で、1つの角はお寺、その隣の角は雑木林(おそらくお寺の所有で立ち入り禁止)
そんな立地なので、五差路を境に明暗くっきり、みたいな感じだった。
お寺と別の角には祠(中には石像)また別の角にはお地蔵さんがあり、それに寺を加えた3点で
結界じみて見えることが、どうにも珍妙だった。
ある時、五差路を通り過ぎる時、ふと視界の端に人が映ったような気がした。
寺の角の付近にちらっと人がいたように思ったのだ。
不思議だったのは、そこに実際には人がいない事を確信していたこと。
なのに、人がいたように感じてしまう。
女性、肩までの髪、ベージュか黄色系のコート・・・おそらくこんな感じだったように思う。
一度、意識し始めると、今までも何となくそんな感覚を持った事を思い出した。
これも不思議なんだけど、今までにもそういう感覚があったと、後から思い出したんだよね。
その後も、「なんとなく」「ぼんやり」程度に、感じる事が何度かあった。
しかし、大学生になりたての俺にとって、他に考える事はいくらでもあったし
それまで霊感のかけらも無かった俺には、大した恐怖じゃないので、気のせいの一言で片づけてた。
とある夜、五差路の付近を歩いてた俺をチャリに乗った女子高生が追い抜いていった。
寺の角を俺とは逆に曲がったのを何となく目で追っていた時、それは起こった。
自転車のハンドルを握っている女子高生の右手が突如、地面と平行になる感じに引っ張られた。
誰かが強い力で、自分の方に引き寄せたようにしか思えない動きだった。
しかしそんな人物はどこにもいない。
えっ?と思ったのも束の間、自転車は派手に横転、女子高生は小さく悲鳴をあげた。
俺は駆け寄って自転車を立たせてやり、「どした?よろけた?」と聞いてみたけど
本人もよく分からないようで、「なんかグラッてなって・・・」と、不思議に思いつつも
明確な理屈は出てこない様子だった。
その五差路を通らずに駅に行くにはかなりの遠回りが必要なので、その後も気になりつつも
卒業までその道を通り続けたよ。