一つが気になってた。
それは敷地の一番奥の塀沿いに建てられていて、外観からして
二階建てなんだろうけど窓がなく異様に無機質な建物で区長に
頼んでも入れてくれなかった。
俺はどうしても気になり区長の目を盗んで中に入ろうとしたが
鍵がかかっていて入ることができない。
でもひとつ気がついたことがある。窓がないと思っていたが塀側
に一つ小窓があり、塀に登ればその小窓から中へ入れそうだ。
俺は塀によじ登り手を伸ばしたが少し高さが足りない。
ジャンプすれば届きそうだと思いジャンプしようとするとその
小窓から顔が見えた。おじさんの顔。
俺は驚いて塀から降りその場を去った。
誰か住んでたんだなと思ったが、あのおじさんは見たことがない。
区長の家は区長と母親の二人暮らしのはずだ。
大切なモノとかが入っているから誰も入れるわけにはいかないんだ。」
と言われた。
でもあの離れの塀側にはエアコンの室外機が置かれていたし物置で
はないはずだ。
ある夜、俺は友達のSとTの3人であの離れに忍び込むことにした。
区長の家の裏は雑木林になっていて、そこから塀に登り小窓を割って
侵入しようとした。今考えるととんでもないガキだな。
塀に登り小窓を見ると小窓が空いている。
これなら割らなくてもジャンプして小窓に手をかけて入ることができる。
まず俺が入り、続いてSが入ってきたがTは2度失敗して落ちて外で見張
りをすることになった。
中は吹き抜けの二階建てで、二階はベットルームになっていて明かりが
なく暗かったが、一階にはぼんやりと明かりがある。
俺とSは静かに階段を降りていくと一階はリビングでソファとテーブル
があり、その少し先にぼんやりと明かりのついたスタンドライトとロッキンチェアーが見えた。
いやひとつの体に二つの顔がある。
一人のおじさんはぼんやりと空中を見つめ、もう一人のおじさんは眼を閉じている。
俺とSが悲鳴をあげる前に一人のおじさんがこちらに気が付き、
「ああーーーーーあ゛あ"ーーーーあ゛あ"ーーーーー」
と奇声をあげた。その奇声によりもう一人のおじさんも目を開けて同じような奇声を
あげ不器用な足取りでこちらに近づいてくる。
俺は悲鳴をあげて逃げたが、Sはその場に座り込み大声で泣き始めた。
「いがないで~。だずげで~。」という声を背に俺は二階の小窓から飛び降りた。
「何があったんだ?」というTに化物がいてSが危ないと伝え、二人で区長の家へ
助けを求めに行った。
区長に事情を説明すると有無を言わさず俺達にビンタをし、鍵を持って
大急ぎで離れに向かった。
俺達は親を呼ばれ、今回のことは絶対に他言しないことを誓い、親達は念書を書かされた。
親達の様子からすると、あのおじさん達のことは以前から知っている感じだった。
公然の秘密だったのだろうか。
親には何度もあのおじさん達のことを聞いたが一切教えてくれなかった。
存在は知っていたが詳しいことは何も知らないのかもしれない。
たぶん年齢から考えて区長の兄弟だと思うけど真相はわからない。
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