3年前の春、某不動産会社に営業で入社した。
引用元: ・死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?296
大家さんに電話した時、「203号室は改装済み」って確かに言ってた。
それなのに、床はワックスがはげてしまっているし、
部屋の奥に踏み込むと畳も変えられておらず古いまま。
押入れの襖もタバコのせいか少し黄ばんでいたし、どうみても未改装だった。
もしかしたら物件のサンプルに使えるかもしれないし写真を撮ることにした。
和室とリビング、風呂とトイレの写真を数枚撮って、残されたのは洋室2部屋。
両方ともドアがぴったりと閉まっていてすごく嫌だった。
まず、手前右側の部屋に入ったんだけど、その部屋は何だかすごく寂しそうな感じだった。
写真撮ってすぐに部屋を出た。
残すは左側の洋室だけで、部屋に入ると右側とは違って、
夕焼けが差し込んでいて明るかった。
すごくほっとしていた。
あーこれでやっとこの部屋から出られるって。
でも、少し様子がおかしいのは、
板張りの床に黒い何かがポツポツと垂れていて染みになってたことだ。
四方から内観を撮り、最後にクローゼットの中を撮影する。
案の定、この部屋のクローゼットもしっかり閉まってあったから、
何の躊躇もなしに開けた。
けど、すぐに開けたことを後悔した。
クローゼットの壁に酸化した血のようなあとがべったりと、大きく広がってたんだ。
けれど、クローゼットの床にも血だまりのような染みができていたのだ。
夕焼けのせいで赤黒く光っているように見え、
口から「ひっ」と、声が漏れてしまった。
すぐに部屋を飛び出して、鍵を閉め、一目散に店へと戻った。
背中には焦りのせいか、冷や汗が伝ってた。
いつものようにデジカメのデータをパソコンへと取り込む作業に移った。
そのまま帰ってしまったので7,8件しか回れていなかったが、
一件につき10枚以上の写真を撮っていたので100枚以上のデータが入っているはずだった。
でもおかしなことに、90枚程度しかない。
どれだけ探しても、203号室で撮ったはずの写真が一枚もカメラの中に残っていなかった。
そこには、3日前から既に人が住んでいた。
もちろん水道メーターに鍵なんかない。
大家さんに電話をすると私から電話なんてなかったと言われた。
確認済みのメモだって私の手元には残ってたのに、認めてはくれなかった。
あの203号室は一体なんだったのか、今でもわからない。
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