「釣り場の怖い話パート2」より
引用元: ・死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?289
「釣り場の怖い話パート2 504 : : 2005/06/16(木) 02:39:27」より
 去年の8月、ダチと2人でトレーラーでアルミボート引いて、
ハチロー(秋田県八郎湖)へバス釣りに行ったんですよ。
4日間の予定で。 
ところが、到着前日から、凄い雨で流入河川とか濁流なんですわ。
 初日、西部やったんですけど、いまいちで、2日目から中央カンセンロとかいう、
ドブみたいな所でやったんですよ。 
小雨の肌寒い中、一日中やって、そこそこ釣れました。
 夕方帰ろうとした時、川の真ん中に人が立っているのが見えたんですよ。
200mくらい先に、ぼんやりと。
 夕方、結構肌寒いし、釣りとか網とかやっている風でもなく、棒みたいに突っ立っているんですよね。
 
 ダチと、なんか気味悪りぃなーとか言いながら、
なるべく避けて、端を通るようにボートを走らせていたんですよ。 
「やべぇぞ!」
前に座っていたダチが言いながら、止めろと、手で合図をしてくるんですよ。
 何だ?と思って見ると、さっきの突っ立っているヤツが、
その時点で、グレーっぽい作業服を着ている男のように見えました、
そいつが、まっすぐお風呂に入るみたいに沈んでいくんですよ。 
自殺なのか? それとも何かしていて、倒れたのか?
助けなきゃ! 面倒な事になった・・・
いろいろな考えが、頭の中をグルグルと回りました。
 全開で近づいていく中、その男は、もう胸くらいまで水に浸かっていました。 
 50mくらいまで近づき、こちらに背を向けた男らしい事が分かりました。 
 やばい、急げ! 
「おいっ、アンタ! シッカリしろ!」
 ダチが叫んでいました。 
 沈んでいく男は無反応でした。 
 
 
ココって、そんなに深かったっけ?
次の瞬間、サササ・・・とプロペラに砂が当り、船外機のエンジンがストップしました。
全然浅いんですよ、そこら一帯。
 行きは岸よりを釣りしながら、流していたんで、 
 そこら一帯が、サンドバー(砂地の浅瀬)になっているのに気付きませんでしたが。 
 とりあえず、エンジンを上げて、
エレキ(低速移動用の電動モーター)を少し水に突っ込んで男が沈んだ場所へ近づきました。 
「待て! 止めろ!!」
「何で?」
「ちょっと、おかしいよ。離れた方がいい・・・」
振り返ったダチの顔は、血の気が引いてました。
「そうだな、そうしよう。」
ホラー映画なら、ここでエンジンがかからないのが定番ですよね。
その通り。
さっきまで動いていたエレキが全く反応しないんですよ。  
 ほんの一瞬、顔を見合わせたり、今いる所の、底を見たりしている間に男は、
沈んだのか、消えたのか、いなくなっていました。 
怖くて、しっかりとその辺りを見たり、周りを探したりは出来なかったです。
 ダチが焦りながら、オールで底を押してその場からボートを離すようにしたんですよ。 
 俺は、少しでも深い所に出たら、速攻エンジン下げて、かける準備をしました。 
濁った水の底が見えなくなってきたところで、慌ててエンジンをかけました。
かかれ、かかれ、頼むから、かかってくれ。
 スターターを、力いっぱい引っ張りました。 
 意外にも、一発でエンジンはかかりました。 
「やったー! 早く、このクサレどぶ川から脱出しようぜ。」
 ダチが、強がっていましたが、顔面蒼白でした。
もちろん、俺もです。 
 
 
 男がいた場所を通りすぎる時、ダチはじっとその辺りを見ていましたが、
俺は、怖くて見れませんでしたよ。
とにかく、全開で走り続けました。
 
 ボートを下ろした場所と自分の車が見えてきて、助かったと思いました。 
「なぁ、アレ、やばいヤツだよなー? まさか、ホントに人だったなんてことは無いよな。」
「当たり前だろ、ペラが底につく浅さだぜ、人間じゃねぇよ。」
「おー、でも、初めて見たぜ、ホンモン。」
そんな軽口を、少しは叩けるくらいにまで、落ち着いてきました。
少し冷静になって、気がつきました。朝より、少し減水してるようです。
「ちょっと減水してっから、ボート上げるのキツイぞ。」
「とっとと上げて、帰ろうぜ。」
その日、トレーラーを使えそうな所が無くて、比較的段差の無い所から、ズリ降ろしたんですよ。
ボートを岸に近づけて、急いで、装備を車に投げ込みました。
 その間、川の方は、なるべく見ないようにしてました。
特に、男がいた辺りは、絶対に。  
軽くなったボートの先を岸に引っ張り上げて流されないようにして、さあ、後はタックルを積むだけ。
ガシャ、ガシャ・・・
「あっ、チッキショー! ボックス(釣り道具箱)、ぶちまけたー!あれっ?・・・」
「ナニ、やってんだよ、早く拾えよ!」
「割れてる、こんなにでっかく・・・」
「えっ・・・」
 ダチのプラノ(釣り道具箱)を見ました。 
 
 取手と留具の部分に、何ヶ所もひびが入っていました。 
「・・・なんだ、こりゃ・・・」
 多分、俺もダチも同じことを考えていたと思います。 
 でも、お互い口に出しませんでしたよ。 
何かが、始まったり、来たりするような気がして。
 
																	