多分話の始まりは『日本のお化け屋敷』だったと思う。
Aはジェイソンとかドラキュラみたいな『パニックホラー』が好みで、日本のホラーハウスは静かでつまらなさそうって話から、「日本では廃墟とか心霊スポットとかに行って、そういう空気を楽しむんだ」と俺は言った。
A:「じゃあそういう心霊スポットに行こうぜ!」
どうやらその土地は近くで牧場をやっているBの親戚が管理しているらしく、狼やコヨーテが出る、という話を聞いた。
俺はそれを聞いた瞬間「違うんだよ!日本の廃墟は人も動物もいない静かな怖さが風情なんだよ!馬鹿野郎!w」と思ったのを覚えている。
道中、車内から鹿?やよく分からない何かの死体が見え、目的地に近づくにつれ喰い荒らされた死体が増えていった・・・。
そして目的地に着くと、本当に静かで、「ここで治療生活を送れるなら悪くないな」と思っていた。
しかし、半分腐った木のドアには『(地名)精神病院』と英語で書かれていたため、人里離れた山奥に『隔離』されている理由が理由が分かった。
Aはドアの前で「いいな?これはミッションだ!」と言いながら、バックからご丁寧にお手製?の消音装置の付いたハンドガンを取り出して、南京錠にぶっぱなした。
錆びていたせいもあってか、南京錠はぐねっと曲がり、AとBの体当たりで地面に落ちた。
先にAがスパイのように銃を構えながら中に入る・・・。
まだ昼だったこともあり、薄暗いだけのエントランスホールはほぼ原型のままで、掲示板に貼られたお知らせや、カウンターの紙コップとポットまでそのままだった。
俺は掲示板の一番手前側の一枚を読んだ。
『新院へ移動のお知らせ』で、施設の老朽化や一部の倒壊により移動がある、と書いてある。
日付は19888/21だった。
次は『C棟15号室の○○さん死亡のお知らせ』で日付は19888/18。
以下5枚が5名死亡のお知らせで、間に2枚『講師変更のお知らせ』とかあった。
あと2枚がC棟での死亡者2名のお知らせで日付は19888/6だった。
全部読んでから気が付いた・・・。
ここは『精神病院』で、こんなに立て続けに死者が出るはずがない・・・。
すぐにカウンターを漁っていたABにこの事を報告したが「そいつはいい!やる気が出る!」という返事だった。
1階の病室、診察室を回ってみた。
多くの残留物を発見するも特に異変は無し。
切り裂かれた人形やぼろぼろになったベッドがあったが、埃まみれで当時の患者の犯行らしかった。
Aは地下に降りる道を探していたが、階段は1つ崩れていて進行不可。
もう1つは降りた先の扉が開かなかったため、しょうがなく2階に行った。
2階は遊戯室や図書室があるくらいで、病室は無い。
しかし、[C棟→]という標識を見つけ、みんな矢印の指すままに階段を降りた。
どうやら隔離病棟らしい・・・。
鉄の防火扉チックな門にかんぬきが掛けられ、さらに南京錠まであった。
Aは南京錠に鉛弾をぶちこんだ!
なかなかしぶとかったが、結局、南京錠が負けた。
中はさらに4つの小部屋への扉があり、一つ一つ鍵とかんぬきが外側に掛けてあった。
一番左を開けると、一面黒っぽい部屋に、簡素なイスとベッドがあった。
良く見るとイスの下やベッドの後ろは白かった。
2つ目3つ目もそんなんだった。
1つ目から3つ目の戸にかんぬきを掛け、4つ目を開けた。
4つ目はまた異様な部屋だった。
床には何かベッドの綿らしきものが散乱し、四方の壁にはマットが付けられ、壁のマットはほじくられコンクリートが所々露出していた。
その時、『バタン!』という音がし、3人とも飛び上がった!
俺とBの視線はベッドの上に釘付けになった。
ビダン!バダン!ビダン!ビダン!
魚のようにベッドの上の何かが跳ねまくる・・・。
俺は声を出してはいけないと口を噤んだが、Bは「ひぇ・・・」と声を漏らした。
途端にそれがバン!と起き上がった。
両手の無いらしき人っぽい何か坊主頭で目の位置にはアップリケが縫いつけられていた・・・。
俺はAとBの手を引いて部屋から駆け出た!
ソイツはよたよたとこっちへ歩いてきていたが、俺はバン!とドアを締めかんぬきを掛けた!
ゴン!ゴン!ゴン!
ドアに何かをぶつける音がした!
Bは泣き出しそうだった。
俺は上への階段にBとAを引きずり出し、またかんぬきを掛けた。
それからは車まで無言だった・・・。
Aはむすっとしてるし、Bは泣いていた。
もうあんな体験ゴメンだ!