子供のころ、母方の実家である岐阜の田舎によく行ってた時の話。
山の間を川が流れているのどかなところで、俺は川で遊ぶのが大好きだった。
そのときも一人で川原の石をひっくり返して生き物を探していたんだが、風が強くなってきたと思ったら大粒の雨がぽつぽつ降り始め、俺はあわてて屋根つきのバス停に逃げ込んだんだ。
そのうち雨はどんどん強くなり、あたりはどんよりと暗くなってきてとうとう雷が鳴り出した。
ものすごい雨と風、雷も近くで轟音立てて落ちている。
俺は一人バス停で多分泣いてたと思う。
まったく弱まる気配も見せないのでしばらく座ってぼーっつとしてたら、突然、びゅうー!とものすごい突風が吹き、ほこりを舞い上げてバス停に吹き込んできた。
俺はたまらず目を閉じて風とほこりをやり過ごした。
そしてふと目を開けたら目の前におじさんが一人立っていた。
上下うす緑の作業服で薄汚れた麻袋を持ってたのを覚えている。
「なにしとる?、はよ帰らんと暮れるぞ。」と話しかけてきたので、怖くて帰れん!と、たしか答えたら、うーんと考える様子を見せ、突然空に叫んで誰かをよんだ。
おじさん:「おーい!!ライスケ!!ちょっと降りて来い!」
次の瞬間、地響きを立てて直ぐ近くに雷が落ちた、俺は耳をふさいで縮んでいたがもう一人誰かがいることの気がついた。
ちょっと太めで白い作業服を着たおじさんがうす緑のとなりでじろじろ俺を見ていて「なんでこんなところにおる?はよかえれ!」とちょっときつめに言われた。
俺がびびって何も言わずにいるとうす緑が「おまえちょっと一服しんか?、その間にこのボウズも帰るわ、そうだろ?」
とこっちに振ってきたので俺はよくわからないままとりあえず「うん」と答えた。
「うーん。フウゴさんはええけど、わしは遅れてるからなぁ。オヤカタ様にしめられちまう」と困惑した顔で白が答えて、うす緑も困った顔で「そうじゃなぁ、、、」とふたりでうーんとうなっていた。
しばらくしてうす緑が聞いた。
うす緑:「ぼうずどこのいえだ?」
「○○の○○」と俺が答える。
うす緑:「○○のもんか。ならオヤカタ様もちょっとは大目にみてくれるんでないか?」
おじさん:「そうじゃなぁ。うーん、たしかに○○なら、、、」
しばらくぼそぼそ話してたらうす緑が「わしらはこれからちょっといっぷくする、お前は急いで帰れ」といってきた。
言っている意味が分からないので聞こうとすると、「ええって、わしらのことは心配するな。いつものこっちゃ」といってにこっと笑った。
いや、そうじゃなくてと聞こうとしたらまたさえぎられ「そうそう、家に着いたら教えてくれ、そしたらまたオコスからな。なに、着いたぞーって言ったら響いてくるで、ほならな」といい終えると、同時くらいにまた風がびゅう!!!とふきこんできて俺は目をおさえた。
寂しさに半泣きになっていると段々と雨と風が弱くなってきた。
雷もさっきまでと違って山の向こうから聞こえる感じに遠ざかっていたので、俺は日が暮れかけた道を必死に走った。
バス停一個分くらい走ったら家が見えてきたので安心感から泣きながら玄関に入った。
なんとなくうす緑と白の二人のおかげで帰れるようになったような気がした俺は約束どおり「ついたー!!、ありがとー!!」と思いっきり曇り空へ叫んだ。
雲に吸い込まれるように普段の声と違った響き方に「??」と突っ立っていたらドオン!!と腹に響く雷がおちてきて、びゅうーという風が来たかと思ったらまた大雨が降ってきた。
その後、ばあちゃんと母親にこんな天気に川で遊んでいたことをキツくしかられて泣きそうになっていたら、じいちゃんがおそらくは助け舟のつもりで「しかしたまたま弱まってよかったな」と言ってきた。
俺はうす緑と白の作業服の二人の話をしたら「バカもんが!!ねとったか!!」と一蹴され、夏山の危険をずーっと聞かされた。
GWが出勤だった代わりの休みでばあちゃんちに来ていたら。雷がなってきたので思い出して書き込んでみました。
たしか7~8歳くらいのときの話です。