俺が小学4年の頃。
留守番中に
電話がかかってきた。
『僕だよ。分かる?』
幼い男の子の声だった。
俺はただ
『分からん』
と応えると
プツっと切れてしまった。
このときは
間違いorイタズラ電話だろ
と軽く流していた。
そして俺が中3の頃。
また留守番中に
電話がかかってきた。
『僕だよ。分かる?』
その瞬間ゾッとした。
男の子の声が
声変わりもせず
声の調子も話し方も
5年前と同じだったから。
(あのときの…!?)
俺はあのときの電話を
忘れかけていたが
鮮明に思い出した。
そしてあのときは
『分からん』と応えたが
今回は応えてはいけない。
そんな気がした。
根拠は無いけど
とにかく全身全霊で
恐怖を感じた。
俺が黙っていると
電話の主は繰り返す。
『僕だよ。分かる?』
2回目も応えなかった。
電話切れば?
と思うかもしれないが
当時の俺は
恐怖のあまり
そんなことできなかった。
無言の俺をよそに
声は繰り返される。
『僕だよ。分かる?』
『僕だよ。分かる?』
『僕だよ。分かる?』
『僕だよ。分かる?』
『僕だよ。分かる?』
『僕だよ。分かる?』
・
・
・
・
段々ペースが速くなる。
(やばいやばいやばい!!)
そう思っていると
声が途絶えて
テレビの砂嵐みたいな
『ザー』という音が
聞こえ始めた。
そしてそれに紛れるように
またあの声が。
『僕だよ。分かる?』
しかし今度は
電話からではない。
俺の背後から…
俺は恐怖を振り切って
『分からんっ!!』
と応えると電話は切れた
それと同時に
俺は力が抜けて
座り込んでしまった。
親が帰ってくるまで
放心状態のように
ボーっとしていた。
あれから家族や友達に
話しても信じてもらえない
しかし俺はあれから
留守番中は電話に出ない。
怖いからだ。
5年前と同じ切り方で
切ってしまった電話が
またかかってくるのでは?
そう考えると
怖くてたまらない。
そう。あの声が。
再び同じ声で。
『僕だよ。分かる?』