公園の間に走る一本の細い道を進んで行くと、唐突に一軒の家が現れる。
この間、深夜に近くの公園へサイクリングへ行った時のこと。
公園の間に走る一本の細い道を進んで行くと、唐突に一軒の家が現れる。
公園の敷地の方へ30メートルほど入った先にあるその家の周りには暗い森以外何もない。
ただ俺のいる小道の街灯が微かにその家を照らしているだけで、その家は薄暗くひっそりと佇んでいる。
とてつもなく異様な雰囲気が漂うその家はかつて日本を震撼させた殺人事件の現場となった家で、今は誰も住んでいない。
まだ未解決の事件だからついこの間までは必ずパトカーが常駐していたけど、最近はどういう訳だかパトカーがいない。
その時、俺はその家の正面まで行ってみようと思った。
何故かは分からないけどちゃんと正面からその家を見てみたかった。
自転車を道の脇に置き、ゆっくりと歩いて行った。
一歩一歩近づくたびに緊張で鼓動が早くなる。
正面に着き、その家を見上げてみる。
ごく普通の一軒家。
そんなに荒れてもいないし、玄関周りからは生活感すら感じる。
ただ普通と違うのは、明かりが一切無い、ただそれだけ。
そう、ただそれだけなのが生々しくて恐ろしい。
その家は事件の瞬間のまま時間が止まってる…
と、その時、俺のすぐ横に誰かが立っていることに気づいた。
これにはさすがに心臓が止まるかと思った。
それが警官だと理解するまでにしばらく時間がかかった。
なんせ真っ暗なんだから。
警官だと分かって安心すると、その警官は「どうしたの?」と訊いてきた。
あー、職質だろうなと思った。
こんな夜中に一人で未解決事件の現場に来てるんだから。
「最近パトカーが止まってないからこの家を正面から見てみようと思って…」
今考えると怪しさ全開な回答だけど俺がそう言うと、
警官は「今は駐在が一人になったからパトカーはないんだよ」と親切に教えてくれた。
「こんなに真っ暗な事件現場に一人で大変ですねー」と言うと、
「すごく怖いよ~、誰もいない家の中から物音が聞こえてくるんだよ~」と俺を怖がらせてきた。
そして数分間その警官と立ち話をして、ご苦労様ですと伝えて家に帰った。
いや~、本当にビックリした。
翌日、そのことを家主に話した。
すると、ある疑問が出てきた。
その1) あの警官は何故俺に職質をしなかったのか。
その2) あの警官は明かりが一切ない状況で何をしていたのか。
その3) 何故、彼は足音も立てずに俺の横に立てたのか…