(場所の明記は勘弁してください。大阪方面とだけ書いておきます。)
慰労会件お別れ会で、酒を飲んで、大体9時半ごろ、宿泊先にしていたホテルに戻った。
営業所の人から、おおよその報告は言っているので、明日は、朝一で本社に戻って
経緯の報告をすれば、この仕事も終わる。
明日は早くに出なければならないし、今までの疲れもあるので、部屋に戻ったら、
速攻でシャワーを浴びて、寝ることにした。
で、シャワーを浴び終わった後、髪形を整え、歯を磨くため、洗面台へ。
大抵、洗面台の鏡は、三面鏡じゃないですか。
で、自分、子供の頃から、両側の鏡を、水平にして、無限に同じ光景が映っているのを
見るのが妙に好きだったんです。
その時も、鏡を水平にして、無限に同じ光景が映っているのを見ていた。
その時、今から考えれば、何故そんな事をしたのかは、解らないのですが、髪形を整える
ために使っていた串を握って、鏡の前で、上下に振ってみたんです。
右にも左にも、無限に櫛が上下に振られている。
で、それを何とはなしに見ていたのですが、あれっと思って左側の鏡を見てみた。
枚数はよく数えていなかったのですが、何枚(って表現でいいのかは、不明ですが)か先に
映っているのだけが、どう見て目ても櫛ではないんです。
そこに映っていたのは、赤い血糊の着いたナイフ。
それが、私の動かす櫛と同じリズムで上下に動いている。
見間違えかと思ったが、そうではなかった、その何枚目かのもの以外は、すべて櫛なんです。
心臓はバクバク言っていたが、変に落ち着いていたのも事実で、右側を見てみると、
右側は、すべて櫛だった。
再び左側をみると、やっぱり何枚目かだけの一つだけが、血糊の着いたナイフになっていて、
そのナイフが、こちらの櫛と同じ動きをしている。
枚数は、数えていなかったが、そのナイフが、先よりもこちらに近づいているような気もする。
その時点になって、急に恐怖が襲ってきた。
あわてて鏡を元に戻し、ベッドへ。
洗面所(というかユニットバス)から何かが出てきそうな恐怖にも襲われ、結局一睡もできず
朝になった。
当然、朝は、洗面所にも行かずに、速攻で、チェックアウト。
一睡もしていないせいで、かなりやつれた顔をしちたと思うが、上司は、仕事の疲れと思ったのか、
「御苦労さん」と、労ってくれて、その日は、もう帰っていいってことになった。
家に戻っても、あの光景が頭から離れず、しばらくは洗面台で、まともに鏡も見れなかった。
でも、まあ、酔っていたし、疲れと酔いで、妙な幻覚か何かを見ただけかもしれない。
と、自分に言い聞かせて、なんとか自分を納得させようとした。
その甲斐(?)あってか、何かは知らないが、一カ月もたつと、生活も日常に戻ったし、
鏡も見れるようになった。
で、大体3カ月も過ぎたころ、とあるホテルで、殺人事件が、というニュースが流れた。
そのホテルは、お察しの通り、私の泊まっていた、あのホテルだった。