夜間に山中の獣道でテントを張り動物が通るのを待って撮影する。
また、赤外線センサーを用いて自動シャッターで撮影するなどです。
引用元: ・死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?266
あの時までは。
奥多摩秩父山地を沢沿いに登ったときのことです。地図を見て想定していた付近には
午後の1時頃に着きました。河原に一人用のテントを貼って5時過ぎまで仮眠を
するのがいつものルーティンです。絶対に人のいるはずのない山奥ですので都会の
ただ中よりは安全なはず・・・そう思っていました。クマよけのラジカセを木の枝にかけ、
眠りにつきました。
準備してヘッドランプを装着し撮影に出かけます。期待と緊張の瞬間です。テントを出て、
おかしなことに気づきました。沢の上流に向かって10mほど離れたところにやはりテント
が見えます。青い色のようです。ここは釣り場ではないし、本当に人外の地です。私の他に
登山者がいるとはとても考えられませんでした。
テント内の明かりは透けて見えません。だれかが眠っているのでしょうか?それにしても、
私がテントを張ったときにはなかったのは間違いありません。私の仮眠の間に音もなく
誰かがやってきた、ということなのでしょうか。・・・とりあえず撮影の下見に出かける
ことにしました。その時、青いテント内に明かりがつきました。するとテントの色が急に
まだらに変化しました。テントの内側からそこかしこにどす黒い色がしみ出しています。
青い地でよくわからないのですが、その時に古い血の色を連想しました。
なんのあいさつもないのにそれも変かな、と考えました。実はそれはいいわけで、何よりその
テントが不吉な感じがして怖かったのです。・・・大変だけど場所を変えよう、と思いました。
そこでテントを撤収し、なるべくそのテントのほうを見ないようにしながらさらに1kmほど
沢を登りました。これで今夜の撮影はできなくなってしまいました。
上流の河原でテントを張り直したら時刻は9時近くになってしまいました。簡易食を食べて
眠りにつきました。まだ肌寒い五月のはずですが、びっしりと寝袋内に汗をかいて夜中に
目を覚ましました。午前2時頃です。テント内の空気がこもっていたのでジッパーを開けて
外の空気を入れようとして、愕然としました。私のテントのすぐ目の前にさっきの青いテントが
あったのです。「えっ、嘘!」・・・するとテント内に明かりがつきました。そしてまだらに
なったテント内から二つのてのひらが黒く浮かびあがりました。テント内の人が私のほうに
向かって手を突っ張っているのです。
懐中電灯でそのテントを照らしました。そのテントの中のものはあちこち手探りをしていま
したが、ジッパーを開けて外に出ようとしています。
私は後ろも見ずに沢に入り膝までぬらして駆け下りました。途中真っ暗な中で何度も転びながら
駆けて駆けて駆け下りました。途中で懐中電灯も放り出してしまいました。息が切れて走れなく
なったところで、うずくまって震えながら朝を待ちました。
次の日ふもとから人を呼んで昨夜の場所に行ってみると、二つのテントがならんであり、一つは
私のもの、一つは青いテントでしたが昨日見たよりもずっと朽ち果てていました。テントの中には
10年以上経過したと思われる男性の人骨がありました。私はそれ以来動物の撮影はやめ、
山へも行っていません。
以上本当の話です。
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