ここに載せて良いかと訊いて、了承は取ってあるが
「自分にとっては感慨深い出来事だったけど、よくある話だからウケないよ」
と笑われた。
まあ、載せてみる。
引用元: ・死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?281
高校生の頃、友人A子が1人家で留守番をしていると、家の電話が鳴った。
A子の家の電話は、廊下に出て玄関のすぐ側にあり、
面倒臭いと思いつつも電話に出たそうだ。
「はい、○○です」
すると、受話器からは「バイバイ」と若い女の声がした。
まるで自動ガイダンスの声みたいに独特なくぐもり方をした声だったそうだ。
しかし、その「バイバイ」の言い方はガイダンスの様に淡々としている訳ではなく、
「バイバーイ♪」
と楽しそうな感じ。
本当に語尾に「♪」マークが合っている様な喋り方だったらしい。
「…どちら様ですか?」
「バイバーイ♪」
「あの…」
「バイバーイ♪」
「ちょっと!やめてよ!」
「バイバーイ♪」
こんな調子で全然埒が明かない。
すぐ切れば良かったのだろうが、A子にはその電話の主にちょっとした心当たりがあった。
当時付き合っていた彼の元カノが同じ学校で、会う度にしつこく「別れろ」と
言って来ていたのだ。
これもその嫌がらせの一環なのだろうとA子は判断し、電話を切らずに
こちらの言い分をぶちまけた。
「あのさーB(彼)も迷惑してんだよ」
「バイバーイ♪」
「こんな事しても私達別れないから」
「バイバーイ♪」
「嫌われるだけだって分かんないの?」
「バイバーイ♪」
本気でイライラし始めた矢先、呼び鈴が鳴った。
ピンポーン
浮かび上がっている。
「はーい」
返事をして、不毛な電話は切ってしまった。
「少々お待ちくださーい」
と、A子は、ガラス戸をガタガタ震わせながら、昔ならではのねじ式の鍵をグルグル回した。
すると、その最中に女のシルエットが遠のく。
「あ!ちょっと、今開けますから!」
古い家なので、建てつけの悪さも手伝って鍵を開けるのには時間が掛かった。
訪問客は焦れて踵を返した様だった。
このままでは、留守番を怠ったと家の者に怒られてしまう。
A子はようやく開いた扉をサンダル履きで飛び出し、辺りを見回す。
坂道を下る銀ねず色の着物姿の女性が目に映った。
「待ってください!!」
A子も続いて坂道を下る。
1tトラックがA子の家の玄関に激突し、横転したのだ。
A子は叫び声を上げ、パニック状態。もはや訪問客どころの騒ぎではなかった。
トラックの運転手の命に別条はなかったそうだが、玄関に激突したトラックは
廊下数メートルまで横転して滑っている。
もしA子があのまま電話を続けていたならば、きっと無事では済まなかっただろう。
A子の家は、有名なスキー場のある山の裾野付近にあって、
カーブが連続で続く坂道に建っている。
少し上に登れば、ホテルや旅館が多く立ち並んでいるので、大きなトラックや送迎バスが
行き来する道だ。
しかし、こんな事故は近隣でも初めてという話だった。
この事故は新聞にも載った。
というか載っていたのを見た覚えがある。
当時は知り合いでも何でもなかったが、同じ市に住んでいるので地方版では扱いがデカかった。
A子は彼の元カノを問い詰めてみたそうだがきっぱりと否定された。
(ごまかしている感じではなかったらしい)
結局あの不可解な電話の主も分からず。
そして訪問客の正体も不明のままだ。
そも。A子は何故、訪問客の用件も素性も訊ねぬまま、
すぐに扉を開けねばと焦ってしまったのか。
本人も上手く説明できないと言う。
「その時の訪問客はもしかしたらお母さんじゃないの?A子を助けてくれたんじゃないのかな」
そんな自分の想像に、A子は苦笑しながら
「分からない」
そう答え、
「だったら嬉しいけど」
と付け足した。
しかし、アルバムの中のA子の母親が着物を着ている写真は1枚も無いし、
形見にもその様な品は残されていない。
父にも祖父母に訊いても普段から着物を着る人ではなかったと言われたそうだ。
連投長文スマソ
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