奇妙な話

【奇妙な話】友人から突然かかってきた電話

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大学4年の夏。Sさんから聴いた話。
その話を聴いたのは、深夜のことである。

255: 本当にあった怖い名無し 2010/06/18(金) 20:25:41 ID:X6H9cn7N0

大学4年の夏。Sさんから聴いた話。
その話を聴いたのは、深夜のことである。
 
北海道にしては寝苦しい暑い夜。
ようやく訪れた睡魔にゆるゆると身を委ねかけたところで、
けたたましく枕元の携帯が鳴った。
 
「……はい?」
何の返答も無い。
「……誰?」
言葉を重ねると、電話の向こうからすすり泣く声が聞こえてくる。
携帯から耳を離して相手を確認する。Sさんだった。
 
高校卒業以来、2,3回しか話していない、同級生。
「どうしたの?」
寝入り端を起こされて気分は良くなかったが、
それよりも泣きながら電話を掛けてくる理由が気になった。
 
『ごめんね……本当にごめん』
電話の向こうでSさんが謝る。
「いや、明日は別に何も無いし、良いけど……」
『うん、本当にごめん……あのね……怖い夢見たの……』
泣きながらSさんはそう言った。
 
「どんな夢か詳しく教えて」
そう尋ねた瞬間、しまった、と思った自分を不思議に思った。
何がいけないんだろう。
考える間もなく、Sさんが話し出す。

 

256: 本当にあった怖い名無し 2010/06/18(金) 20:26:24 ID:X6H9cn7N0

その日、Sさんは午後0時を少し回った頃に眠りに就いた。
クーラーが苦手な彼女は、窓を開けて眠っていたそうだ。
女性の一人暮らしにしては無用心だろうが、彼女の部屋はマンションの6階にある。
虫も、人も、6階の高さまでわざわざ侵入すること無い。
 
どれくらい眠ったのだろうか。
――どすん、と腹の上に何かが乗った感触で目が覚めた。
Sさんは“何?”では無く、“誰?”と思ったと言う。
人の感触。人が自分の上に勢いよく飛び乗ってきた。
そう思った。
 
叫ぼうとした声がひゅうっ、と擦れる。
声が出ない。怖い。
上にいる者がSさんの手を強く押さえつける。
彼女は必死になって抵抗するが、上にいる者はビクともしない。
 
半狂乱になりながら、Sさんが身体を捩る。
上にいる者はくつくつと、小さな声で笑っている。
怖い。怖い。こわい。こわい。
激しい抵抗と恐怖でSさんの意識が一瞬白んだ。
 
その瞬間、上にいる者が、グッ、とSさんの口に何かを捻じ込んでくる。
熟れて、腐りかけたメロンの味がSさんの口に広がった。
吐き出そうとするが、しっかりと口を手で抑えられている。
苦しい。息が出来ない。
 
気持ちは拒絶していたが、体がゴクリ、と押し付けられた何かを飲み下す。
甘く、生臭い何かが喉を通って、胃に落ちていくのが分かる。
 
上にいる者がクツクツと笑う。
『上々……上々……』
上にいる者がそう言って笑った瞬間、ふっと、重さが消えた。

 

257: 本当にあった怖い名無し 2010/06/18(金) 20:27:07 ID:X6H9cn7N0

『……そこで、叫びながら目が覚めた』
一気に話し終えたSさんが、息を吐きながら話を締めた。
「ただの夢だ」
「気持ちが昂ぶっていたんだ」
「暑い夜で、寝苦しかったからだ」
僕は、思いつく限りの理由を述べた。
 
半分以上は自分に言い聞かせていたのだと、今になって思う。
その後、彼女と少し近況などを話して、電話を切った。
 
それから3ヵ月ほど経って、Sさんからまた電話が来た。
『子供が出来た』
『今度、彼と結婚する』
以前とは打って変わって明るい声で、彼女は僕にそう告げる。
 
祝いの言葉を述べ、お互いの近況を報告していると、一瞬会話が途切れた。
「そういえば、前に見た夢、あれから見た?」
好奇心を抑えきれず、僕はそう尋ねた。
『……夢って?』
「3ヶ月くらい前に、電話くれたじゃん。怖い夢見たって。その夢の続きとか――」
『私、そんな夢なんて見てないし』
僕の言葉を、無機質なSさんの言葉が遮る。
 
ピシ、と空気が凍りついた気がした。
なんとか取り繕って、電話を切った。
電話を切って、冷や汗をかいていることに気が付いた。
 
それ以来、Sさんとは話していない。
先ほど、思いついて電話を掛けてみたが、結局繋がらなかった。

 

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