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私の知り合いで、今は結婚もして子供も要る女性が、二十歳頃に体験した話です。
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私の知り合いで、今は結婚もして子供も要る女性が、二十歳頃に体験した話です。
はじめて実家を離れて、一人暮らしすることになり、その土地のお弁当屋でバイトもはじめたんです。
お弁当屋に来る客は常連が多く、一ヶ月もするとだいたいの客の顔もわかってきたのですが、
常連客の中に一人、小さな男の子がいて、見るからに小学校低学年で七,八歳くらいの男の子。
その男の子は夕方頃に来てお弁当をひとつだけ買って帰るんですが、
いつも寂しそうで影の薄い感じで、バイトをやっていた彼女はその男の子のことが気になりだしました。
「お母さんは、いないのかな?夕飯をいつも一人で食べるのかな」と心配になりはじめたそうです。
店長に、なんとなしにその話をすると、つれないそぶりで「お客さんのプライベートなことに口出ししないように」とのこと。
でも彼女は、日に日に気になっていき、男の子の客をかわいそうに感じるようになっていったそうです。
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そんなある日のこと、あの男の子がお弁当を買いに来たときに、「大丈夫?僕、お母さんは?」とつい声をかけてしまい、
店長がうしろから「○○さん、ちょっと」と彼女を奥に呼び、こんなことを言われたそうです。
しかめっ面をした店長がボソボソッと耳もとで言うには
「あの子はね、十年以上前から見た目が変わらず、ずっと買いに来てるのよ。
うちはお弁当屋だから客には売るけど、それ以上のことには関わらないほうがいい。」
――どう見ても七,八歳くらいの男の子が十年以上前から買いに来てた……?――
彼女は驚いて、どういうことだか、一瞬わからなかったそうです。
男の子はそのまま、お弁当を買って帰り、怖くなった彼女はその後しばらくして、そこのバイトも辞めたのですけど
その後十何年経った今も、もしかするとあの男の子はいまでもあの店にお弁当を買いに来てるのかもしれません。(了)