帰省するため車で山道を走っていたAさん。
もう日も沈み、周りは真っ暗だった。
夜の山道ってのは気味が悪いな…と思いつつ走っていると、林と道路の境に女がしゃがんでいる。
こんな時間になぜ…と不思議に思いつつ、車を停め
「どうしました?」
と声をかけた。しかし女は無反応。
気を悪くしたAさんは、もうシカトして行こうと思ったが
さすがに夜の山道に置いていくわけにもいかず
後部座席の扉を開け乗るように促した所、女は黙って乗り込んできた。
車を走らせ、山道を進む。間を持たせるため当たり障りのない会話をするが、女は無反応。
さすがに頭にきたAさんは車を停め、
「ねぇ君、どこまで行くつもりなの!?」
と少々苛立ちながら聞いた。
すると女は林の中を指さした。
「じゃあ、ここで降りるんだね?さよなら!」
Aさんがそう言うと、女は礼も言わず車を降り、林の中に入っていった。
しばらくして冷静さを取り戻したAさんは、罪悪感に苛まれた。
ちょっと言い過ぎたかな…それに女の子1人で夜の山なんて危険だよな…。
Aさんは車を降り、女の後を追って林の中に入った。
しばらくして、女の白いワンピースが遠くに見えた。
女は古びたボロ小屋の中に入っていった。
「あそこが彼女の家なのかな…?」
そう思いながら小屋の前まできたAさん。
新聞紙で目張りされた窓の隙間から、僅かに薄明かるい光がもれている。
「ここが家なら、もういいだろ…」
そう思いつつ、彼女のことが気になったAさんは
古いサッシ戸の鍵穴から部屋の中を覗いてみた。
だが、視界に広がるのは真っ赤な光。
「ん…何だ?赤い壁紙の部屋なのか?」
Aさんは再び鍵穴から覗いてみた。
やはり真っ赤な部屋しか見えない。
その赤をじっと見てると頭がクラクラして立ちくらみがした。
気味悪さに寒気がしたAさんは、急いで車に戻って先を急いだ。
しばらく走ると、休憩所を兼ねた駐車場があったので少し休むことにした。
ぐったりしたAさんは仮眠を取った。
どのくらい寝ただろうか。
ドンドンドン!と運転席の窓を叩く音で目が覚めた。
すっかり夜も明け、周りは朝もやに包まれていた。
窓を叩いたのは、駐車場の管理者らしき初老の男だった。
「どうしました?」
初老の男は、疲れきった顔をしたAさんに尋ねてきた。
男はこれまでの経緯を話した。
すると初老の男の顔色が変わった。
「その子…白いワンピース着て髪が長かった?」
「ええ。そうです。ご存知なんですか?」
「ああ…あの子は可哀想な子でね…
小さい頃に難しい病気になって、家族であそこに越したみたいなんだけど
精神のほうがかなり…ね。だからあんな感じなんだよ。
両親が死んでもまだあそこに1人で暮らしてるんだ。
その病気のせいなのかな…あの子、目が真っ赤なんだよ。」
Aさんは震え上がった。
じゃあ…鍵穴から覗いたときに見た赤い色は…!?