そんなに怖い話じゃないんですが、おばちゃんの
不思議なお話しを聞いてください
もう、20年くらい前になりますが、私は新人のナースでした。
職場は8Fの内科病棟でした。
ある時、服薬自殺を図った女性の患者さんが入院して来ました。
その方は鬱で、再度自殺をしてしまう可能性があった為
ナースステーション付近の個室に入室してもらいたかったのですが
あいにく空きが無かったので、病棟の奥詰まった場所にある
2人部屋に入室になりました。
この部屋は病棟の行き止まりにあって、
必ずナースステーションの前を通らないと外に出れない場所でした。
また、同室の入院患者さんは、重めの認知症のおばあちゃんで、
いつもベッドの上にコンパクトに正座をして
話しかけてもニコニコするだけで、意思の疎通は出来ない人でした。
入室して3時間くらい経った頃だったと思いますが、
自殺未遂の患者さんがいない事に気が付きました。
まだ日勤帯だったので、スタッフは大勢いました。
私たちは2人一組になって患者さんを探しました。
外も中も、ボイラー室やリネン庫なんかも探したのですが
一向に見つかりません。
私とペアを組んだ子が
「一度病棟に戻ろう」と言ったので、
私たちはなにか手がかりが無いかと病棟まで戻って来ました。
しかし、病棟に戻っても見つかった報告も無く
「いよいよ警察に連絡するしか無い」と婦長が言い出したので
せめて、掛布団だけでも整えておこうと思い、
私とペアの子と一緒に病室に向かいました。
「どこ行っちゃったんだろうね~」
軽くおしゃべりをしながらベッドを整えていると
ペアの子が、認知症のおばあちゃんに向かって
「○○さんは、隣の人がどこに行ったのか知らない?」と
聞きました。
すると、認知症のおばあちゃんは
ゆっくりと窓を指さして
「そこから出て行ったよ」
と、言いました。
そう、ここは8Fなんです。
あとは書かなくても、結果はお分かりになるかと思いますが
まったく、おしゃべりのできないおばあちゃんが
なんであの時だけ意思疎通出来たのか…
今でも不思議でなりません。