5年前の夏の夜。
友人の彼女を驚かせてやろうと、彼氏と俺を含めた男4人が
プロレスラーのマスクみたいなのをかぶって夜道で待ち伏せ。
会社帰りの彼女が予定通りやって来た。ここで「待ちな!」とか
なんとか言いながら周囲を取り囲んで怖がらせる予定だったんだが
急に彼女が立ち止まったから飛び出すタイミングがずれた。
携帯に電話でもかかったのかな? と思っていたら、
俺らが隠れてる方をガン見してる。
「ヤベェ、ばれてるぞ」と計画を中断。
マスクを取って「感がいいなぁ」と言いながら彼女の前に出た。
そしたら彼女が「バカ、早く逃げろよ!」と悲鳴をあげて逆戻り。
あっという間に走って逃げてった。
「なにこれ、ドッキリ大成功?」と俺らは顔を見合わせたが、
なんか誤解されたままだと嫌なんで、説明するために
彼女を追いかけた。
彼氏が携帯をかけて居場所を確認すると、彼女はジョイフルに
駆け込んでいたようだった。
「驚かせちゃってゴメンゴメン(笑)」と頭下げながらジョイフルに
いる彼女と再会すると、彼女はまた俺らをガン見。
「あんたたちだけ?」と聞いてくるので「そうだよ?」と返したら、
彼女はデカイ溜息を漏らした。
で、彼女がポツリと「あんたたち、増えたり減ったりしてたよ」。
俺達が隠れてる辺りで影みたいなのが動いてて、なんだろうと
思ってみてると俺らが出て来たんだそうだ。
そしたら4人から5人へ、5人から4人へ、4人から3人へ、
3人から4人へと増えたり減ったりしたように見えたんだという。
幽霊かどうか分からないけれど、とりあえずヤバそうだったんで
「逃げろ」と叫んで自分も逃げたらしい。
「今は大丈夫みたいだけど」と、ジンジャエールを飲む手が震えてた。
彼女と彼氏は結婚して子供もいるけど、特に異常は無し。
不幸があったといえば、驚かそうとした4人の内の1人が
濡れ衣で南米の支社に飛ばされたぐらいか。