真夏の真夜中に友達5人でドライブしてる時に、山の中にある小さな墓地を
見つけたんですよ。
縦横二十メートルぐらいの正方形の土地で
その四方を、背丈の二倍ぐらいの高さのブロック塀が囲んでました。
その墓地の出入り口はたった一つで、錆びて赤茶けた、鍵の掛かってない
鉄の門があるだけ。
それで、それを見つけた俺らは思いつきで、肝試ししようぜって事になりまして。
ライトも持たずに墓地に近づいて行ったんですね。
山の中なんで街灯みたいなのもなく、周りは月明かりでぼんやり見える程度。
俺らは墓地の入り口に辿り着いて
半笑いで、鉄の門をキィーって感じで開けて、一歩踏み入れたんです。
そしたら、その一歩踏み入れた瞬間に、墓地の真ん中あたりを
明らかに人の形をした灰色の影が、徒競走の選手みたいな綺麗なフォームで
ダッーって全速力で横切っていったんです。
えっ…なに今の?ってなってると、横にいた友達が今俺らが来た道を走って
逃げ出したんで皆も、それにつられて車まで逃げたんです。
息を切らせながら、車に辿り着いて、あれなんだよ!わかんねえ!
暑いからホームレスが涼んでたんじゃねえ?いくら何でもこんな所で涼まねえだろ
みたいな感じでパニクってると、友達の一人が「おい!」って叫んで、墓地を
指差したんですね。
それで墓地の方を見ると、閉め忘れた墓地の門から
さっきの灰色の人影が出てきて、全速力でこっちに向かって走り出したんですよ。
俺らは慌てて車に乗って山道を下りました。やばいよ!やばいよ!来るよ!来るよ!
って感じで車内は半狂乱。
振り向くと灰色の影がもの凄く綺麗なフォームで車との距離を縮めてくる。
やばいよ!やばいよ!殺されるよ!みたいな感じで山道を下って
平地に出ると、薄闇の向こうにコンビニの灯りが見えたんでそこ目指して車を走らせました。
あとちょっとでコンビニだ!おい!あの人影は?
それで振り向いて見ると、もう車のすぐ傍まで来てました。
やべえ!、ドライバーがコンビニに向けてハンドルをきると
一瞬、人影の胸の辺りに、何か見えたんです。
それはゼッケンでした。番号は7。
そして、右手にバトンのような物も見えました。
俺らは無事にコンビニに辿り着き、車を降りて店内に雪崩れ込みました。
店内から外を伺いましたが、あの人影は見当たりませんでした。