当方東京の下町で育ち、現在も実家暮らしのアラサー美男子です。
高校卒業と同時に働き出したんですが、就職するまでの我が家は貧乏で家庭環境も最悪でした。
高一の頃に上野のパンダ橋(上野公園とJRを繋ぐ陸橋です)でボッーと座っておりました。
こう言ってはアレですが、パンダ橋には浮浪者の方から頭を抱えているサラリーマンなど色んな方が橋の柵に座っています。
その群れに加わっている私に話しかけてきた杖突きのオジさん。
金に縁のない私でもわかる高級そうなスーツに身をまとい装飾の施してある杖を音高く鳴らして近づいてきたのが印象的でした。
「兄ちゃん若いのに勿体ねえやん。一週間山で働かんか?」
と話しかけてきました。
ネットでタコ部屋というものを見たことがあり、直感でタコ部屋への誘いだと判断しました。
「金はどんぐらいもらえるんですか?俺16なんですけど」
「いーから、行くで。若いの呼ぶけえ」
ジイさんが慣れない手つきで携帯を弄っている間にダッシュで逃げました。
逃げた後パンダ橋を覗きに行くと何人かの浮浪者らしき方を引き連れて行き、京成裏に停めてあったワンボックスに乗り込んでいきました。
当時親身にしてたA君という奴がおりまして、彼も貧乏仲間の一人でした。
A君はどうやら危ない薬かなにかをやっているという噂は聞いていたのですが、どうやら高校生には賄えないほどの借金をしていたそうです。
そのA君が行方不明になったと聞かされたのは自分がパンダ橋で杖突きオジサンに会った翌日。
A君の兄から事情聴取を受けた時に聞いたのは、
「Aを最後に見たって言ってる奴はパンダ橋に居たと言っている」
と聞かされたもので、杖突きオジサンのことを話しました。
A兄は何ヶ月かA君を探しておりましたが、いつしか断念したようです。
自分が高校卒業する間近にA兄に再開した時にA君について伺ったところ、
「厄介なのに絡まれてな、もうそろそろ帰ってくる」
と一言話して別れてしまいしまた。
A君はタコ部屋に入られてしまったのかなーとたまに思い出します。