家をリフォームすることになり、自分の部屋を整理していた時のこと。
押入れから昔のアルバムが出てきた。
懐かしいなと思いつつページをめくっていると、中学時代の一枚の写真が目に留まった。
それは修学旅行のスナップで、クラスメイトが写したものだった。
京都の清水寺あたりで撮ったと思われるその写真には、なぜか見覚えのない男子中学生が写っている。
だが、それが誰なのかどうしても思い出せない。
卒業アルバムを引っ張り出して、全クラスの生徒と照合してみたが、該当する者もいなかった。
友人と肩を組んでピースサインしている自分の背後に、カメラ目線の陰気な顔をした中学生。
写真を現像した当時、友人も焼き増ししてもらってるはず。
話題になってもよさそうなものだが、そんな記憶はさっぱりない。
まあ中学を卒業して五年も経っていたので、そんな些細なことは忘れてしまったのだろう。
幸い一緒に写真に写っている友人とはたまに遊ぶこともある。
今度会うときに話のタネにでもするか、と思ってその日は終わった。
そのことを忘れないようにと、写真を卒業アルバムにはさんで、机の上に置いていたのだが・・・・・・
週末、連絡して友人宅へ出かけることになった。
家を出る前にアルバムから写真を抜き取ろうと思ってページをめくったが、なぜかなくなっていた、
三十分ほど探したのだが、どうしても見つけられず、諦めて家を出た。
おそらく友人も持っているはずだ。
その時に確認すればいいか、と思った。
自分は友人宅に着くなりその話をした。
じゃあ同じ写真があるはずだから見てみるか、ということになり、友人が押入れからアルバムを引っ張り出した。
「これか?」
確かにその写真だった。
だが、友人の持っていた写真には、あの中学生は写っていなかった。
結局それを証明する写真がないということで、こちらの見間違いというふうに決着がついた。
でも、あの中学生の顔は、今もはっきり覚えている。