俺が中3の時、祖父が死んで、祖父の家を親父が家を相続したのだが
その家が ほんのり頻発だった。
最初にほんのり体験したのは、2歳下の妹。
夕方、部活から帰ってきて、玄関で靴を脱いでいると足首を掴まれる。
「え?」と思って、見直すと消える。
夜、トイレ(和式)で踏ん張ってると、足首を掴まれる。
「え?」と思って、見直すと消える。
夜、自分の部屋で、机に向かっていると、足首を掴まれる。
「え?」と思って、見直すと消える。
妹は小1から剣道やってたので、さほど怖くはなかったらしいが、
気持ち悪いのと、うざったいのがいやだったらしい。
次にほんのり体験をしたのは母親。
母親は几帳面な人で、襖や障子、引き戸などは
キレイにピシッと閉じていないとイヤな人だったのにもかかわらず、
母親が閉めたはずの食器戸のガラス扉が3cm開いてる。
同じく、閉めたはずの押し入れのふすまが3cm開いてる。
同じく、閉めたはずの障子が3cm開いてる、が頻発…
母親は、俺たち兄妹がだらしないか、イタズラしてるのかと思ったが、
俺たちが学校に行っていない間にもよくあるので疑いは晴れた。
ある日、母親が料理中、調味料を取ろうと振り向いた瞬間、
食器棚の中から手首がにゅっと出てきて、
そっと開けようとしているのに遭遇した。
母親は手首が開けたのを凝視していたが、
はっ!と我に返って「こらー!」と大声で叱ると
手首はヤベッ!って感じで食器棚の内側に隠れた。
ちなみに母親は元看護婦。
何事にも動じない我が家随一の豪傑さん…
俺は妹と母親の体験を聞きながら、心底びびっていたが
表面上は見栄張って「なんだよ、全然たいしたことねーじゃん!」。
或る日曜日、俺が業者テストを受けに行って帰ってくると家族は買い物中。
風呂の掃除しておけって置き手紙があったので、風呂掃除した後、一番風呂に入った。
夕暮れ時、風呂につかって一息ついていたら、
どこからかペタ…ペタ…という音がする。
なんだ?と思って、あたりを見回すと…
風呂場入り具とのガラス戸に、
脱衣所側から手のひらがペタ…ペタ…と…
「なんだよ、妹子。帰ってきたのか?」
ペタ…ペタ…
「母さん? え? 父さん?」
ペタ…ペタ…
「お、お、おわああああああああ!」
俺が大絶叫してると、家族が買い物から帰ってきた。
親父が様子を見に来てくれた時、俺は風呂桶の中で顔を真っ赤にしながら暴れてた…
俺は妹やお袋と違い、ギター弾くしか能がないヘタレです…
ドンジリに控えしは、うちの親父殿。
長距離トラック運転手で、顔とガタイはいかついが、
あんまり頭の程度はよろしくない頑固者。
長距離から帰ってきての夕暮れ、
親父殿がまだ家族が誰もいない家で、布団を敷いて寝ていると…
頬をペタペタと撫でられる。
お袋かと思ってその手を握り、引き寄せようとすると…
ん? なんか、違うぞ? と目を開けると…
天井からブラーンと長い長い手が伸びている。
まるで、包帯のようにブラーンと。
親父、そのまま失神。
家族が帰ってきて、一所懸命に訴えるが
お袋は「はいはい。なんにもなかったんでしょ。気にすんじゃないわよ」と却下。
この手のほんのり現象は、俺が高3まで続いた。
で、俺が高3の5月。
市からやってきた家屋防災検査に引っかかり、
曾祖父の時代に建てた家屋は
震度5以上で崩壊の危険ありと診断され建て直すことに。
親父殿がどうしてもオーディオルームが欲しいとのことで、
半地下をつくろうとして掘り返したら…
出てきました、人骨… 地下3メートルぐらいから…
警察の調べで200年以上前のものだから事件性無しとなり
無事に家は建てられたけど、
あの手首はやっぱり、埋まってた人骨のものだったのかな、と。
以上ッス。本当にほんのりですんませんでした。