奇妙な話

【奇妙な話】あの人は何を見たんだろう

799: 本当にあった怖い名無し 2015/08/15(土) 18:32:10.59 ID:DOxiYSKR0.net
kusa

高校生だった時の話。俺の家はまあまあ田舎で、学校も山の上にあった。

 

当然、登下校の時も山道になるんだけど、
途中で結構大きな墓地があって、そこから住宅地の方に階段が続いている。そうするとやっぱり色々とアレな噂も
あったり不審者がいるとかなんとかで、その階段を使う奴は少なかったんだけど、俺は特に気にしなかった。近道だし。
で、ある夏の日。朝からめちゃくちゃ暑くて、汗だくになりながら階段を登ってると、上の方から派手なエンジン音。
見ると男性が一人草刈りをしてる。階段脇の斜面に立ちながら草刈り機(長い棒の先に丸い刃が付いてるアレ)で
ブインブインバリバリと作業中で、朝から大変だなとか思いながら学校に向かった。
夕方、部活のランニングでは最後にその階段を登るんだけど、その男性はまだいた。
朝見た時から8時間以上経ってるし、明らかに弱った様子で階段に座り込んでる。乱雑に刈り倒された草の中に、男性が
飲んだと思われる空のペットボトルが何個も散乱していた。働くって大変なんだなとか思いながら階段を駆け上がった。

下校時、男性はまだいた。いたけど、明らかに様子がおかしい。
遠目には草刈り機を乱暴に振りまわしてるのかと思ったけど、まずエンジン音がしないし、男性が持ってるのは草刈り機じゃ
なくてスコップだった。スコップをめちゃくちゃに振りまわしてる。もしかして熱中症とかでおかしくなったのかと思って
声をかけようとした瞬間、

 

800: 本当にあった怖い名無し 2015/08/15(土) 18:32:55.02 ID:DOxiYSKR0.net

「あっちいけ!」
と、とんでもない大声で男性が叫んだ。俺に言ったのかと思ったけど、男性は違う方を向いていて、俺に気付いた様子も無い。
おいおいやべえよなんだよこれと、その時点で俺は回れ右して階段を登ろうとしてたんだけど、
「あああっ!ああああっ!!」
まるで何かに気付いたみたいに、男性は叫びながら一本の木をスコップで刺し始めた。スコップの先を何度も何度も突き刺し
て、木を切り倒そうとしてるんだと分かった。小さな木だったけど、さすがにすぐ切り倒せるわけもなく、
俺も最後まで見てる勇気は無くて階段を駆け上がった。背後からは、男性の叫び声と木を削る音だけが響いていた。

次の日、おそるおそる階段を登っていくと、男性はもういなかった。
草刈り機もペットボトルも無くなっていて、きっと途中で正気に戻ったんだろうとホッとしてたら、階段にスコップが落ちてる。
しかも先端がひしゃげたみたいに潰れてた。横を見れば、男性が切り倒そうとしていた木。立ってはいたけど、表面がほとんど
削られてて、もう少しで本当に切り倒せたんじゃないかって状態。更に、枝もほとんど折られてた。
それ以来、俺もその道を一人で歩くことはやめた。あの男性が何を見たのか、本当に無事なのかも分からない。

 

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