田舎だから大学には車で通ってたんだけど、その日も大学に車を走らせてたら、
本当に突然、なぜだか無性に山に行きたくなった。
そんで突発的に車で1時間くらいの距離にある山に行くことにしたんだ。
その山には車置いて、徒歩で40分くらいのところに滝があるんだけど、
けっこうな獣道とか川を渡ったりとかしなきゃ行けないところで、
俺は大学に行く格好のまま、その滝目指して歩いた。
途中で何人かすれ違った登山客が、えって顔でこっち見てたな。
冬だし、山登りの恰好じゃないし、あやしいと思ったんだろうな。
まだ雪は降ってなかったから、俺は滝に着いて、適当に近くの岩に腰を下ろして
そのままぼーっとしてた。
なんかすごい楽しくて、今日は大学行かずにずっとこのままここにいようと思った。
けっこう気温は低かったはずだけど、寒いと思った記憶はない。
そのうちだんだん眠くなってきて、俺はそのまま眠っちゃったらしい。
そしたら夢の中に死んだじいちゃんが出てきた。
じいちゃんはきりっとした軍服みたいの着てて、周りが白く光ってた。
そんで、微笑みながらたった一言、「大丈夫だよ」って言った。
その瞬間目が覚めた。
もうその場にいたいという気は失せてて、俺はいそいで山を下りた。
幽霊にあったとかじゃないけど、もしあのまま眠りこけてたらと思うと、
俺的には洒落にならない話。
今思えばあれ、じいちゃんの海軍だった時の制服なんだろうな。
じいちゃんはミッドウェーで沈んだ某空母に乗ってた。
それ以来、一人で山には行ってない。