奇妙な話

【奇妙な話】大学一年の時に糖質になり実家へ帰省することになったのだが…

397: 本当にあった怖い名無し 2014/01/25(土) 00:02:31.45 ID:4rqWkTk20

俺は五年前、大学一年の時に糖質になった。

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最初は何となくやる気が起きないことから始まったんだが、そのうち
大学の構内とか、人込みの中とかで、俺の悪口が聞こえるようになったんだ。しかも人が気にしてるような、えげつない悪口が。
当時、俺はそれが幻聴だなんて解らなかった。ただ、誰かが腹の立つ
ようなことを、こそこそと囁いているというような認識だった。
俺は次第に鬱病のようになり、部屋に引きこもってしまった。それでも
悪口は聞こえてくる。俺は怖くなって、下宿の隙間という隙間を目張り
して、完全に籠城するようになった。
心配した友人が訪ねてきたのだが、話をするうちに、どうも俺の方が
おかしいという結論になり、病院へ行った。そしたら糖質だった。
(簡単に書いたが、ここまでで半年は経過している)

 

398: 本当にあった怖い名無し 2014/01/25(土) 00:03:17.03 ID:M63QCTQ20

周囲と相談し、俺が一人で生活することは困難という結論に至った。
俺は大学を休学し、急遽田舎へと帰ることにした。都会のK駅を発った
のは、夜の七時くらいのことだった。駅に至るまでの雑踏や、電車の
中では、始終、本物と変わりない悪口が聞こえていた。
電車の外は段々と暗くなり、乗客も次々降りてゆく。
俺が住んでいたK府(つうか京都府)から田舎のN駅までは、一度だけ
乗り換えをしなければならなかった。
俺は予定通りY駅で降りたんだけど、乗り換えるべき電車がない。
困り果てて駅員に相談したところ、どうやら俺は駅を間違えたらしい。

 

399: 本当にあった怖い名無し 2014/01/25(土) 00:03:53.63 ID:M63QCTQ20

「この駅で降りるはずがないんだけどなあ」と思いつつ、俺は駅員に
Y駅へ至るまでの路線を聞き出した。駅員は、この駅から出る電車
に乗り、X駅で乗り換えをしなければY駅には着かないと言った。
おかしい、おかしいと首を傾げつつ、俺は糖質だから、
俺の方こそおかしいんじゃないかとも思った。
駅員が指示する電車に乗り、俺はX駅へと向かった。
けれど後々のことを考えれば、やっぱおかしかったのかもしれない。
電車の中では、やっぱりずっと悪口が聞こえていた。
(X駅が何であったかよく覚えていない。知らない駅だった)

 

400: 本当にあった怖い名無し 2014/01/25(土) 00:05:58.77 ID:M63QCTQ20

X駅に着いたのは、二十分ほど経った後だ。
ただX駅に着いて愕然としたのだけど、そこは山の中の駅だった。
まあN駅まで田舎の路線を走っていたこともまた事実だが、
それにしてもこの寂れ具合は驚いた。狭い山の中の集落で、まばらな
家々が見える他は、ただ田んぼがあるばかりだった。
駅員からは乗り換えるだけでいいと聞いていたけれど、次の電車が
いつ来るのか不安になってしまった。だって、線路は一本だけしか
なかったし。時刻表のようなものもプラットフォームにはない。
明かりは電球が一つあるだけだし、誰もいないのに悪口は聞こえてくる
(また間違えたのwwみたいな)し、気分は最悪だった。
とりあえず、俺はまた駅員に路線を聞いてみることにした。
駅員がいるのか、という疑問はあったが。

 

401: 本当にあった怖い名無し 2014/01/25(土) 00:06:43.47 ID:M63QCTQ20

はっきり言うと、駅員はいた。真っ暗な駅舎の中、受付にだけ光が
灯っていて、軍人みたいな制服に身を包んだ駅員が、一人だけ。
「Y駅に行く電車はいつ来ますか?」と聞いたけど、駅員は
ぐごご、と低いうなり声を出すだけだった。重ね重ね同じことを
たずねても、駅員は唸り声を出して、何かを催促する手振りをする
だけだった。はっきり言って、知的障害なんじゃないかと思った。
どうやら駅員が切符を出せと言いたいらしいと気付いて、
俺は切符を出した。すると駅員は、何も言わず切符を切ってしまった。
それはY駅まで行くための切符だったのに、俺は愕然とした。

 

402: 本当にあった怖い名無し 2014/01/25(土) 00:07:35.69 ID:4rqWkTk20

「貴方は話が解らないんですか? 他の人を呼んでください!」
俺がそう言うと、駅員は駅舎の外へ行けというような手振りをした。
言われるがまま(?)俺は駅舎の外に出たんだが、全く誰もいない。
やはりあの駅員は知的障害だったのかもしれない。
「お前はあの駅員と同じ知恵おくれだ」
みたいな幻聴が繰り返し脳内に響いていた。多くの人が非難していた。
母親に電話しようと思ったが、圏外だった。
俺は駅舎へ退き返そうとしたが、あの知的障害の駅員に会うと思うと
何となく嫌だった。(知的障害の駅員というのは確かに変だが)
ただ、何もない田園風景の、遠くから、何かが祭囃子のようなもの
が聞こえていることも確かだった。それが幻聴であるか、全然判断
がつかないけれども。もしかしたら駅員は話の分かる地元民に聞け
と言いたかったのかもしれない。俺は音のする方向へ足を向けた。

 

403: 本当にあった怖い名無し 2014/01/25(土) 00:08:26.93 ID:M63QCTQ20

誰もいない道を歩いて、十分ほどした後のことだろうか。
向かい側から、一人の老人が歩いてくるのが見えた。
その老人には片足がなく、義足をしていた。歩くたびに、こつこつと
金属質な音が聞こえる。俺は老人を捕まえて、今まであったことの
事情を話した。すると老人は、
「この十字路を真っ直ぐ行って、突き当りを左に行ったら、トンネル
が見えるけえ、そこを通って、次に見える角を右に、その次の次の角
にバス停があるけえ、そこからY駅に行けるけえな」と言う。
それが本当に正しい言葉かどうかは解らなかったし、ややこしい
老人の説明に俺は混乱した。すると老人は「地図を書いてやろうか」
と言った。(上の説明だけやけに覚えているのは、地図が今もあるから)

 

404: 本当にあった怖い名無し 2014/01/25(土) 00:09:10.12 ID:M63QCTQ20

老人は手帳を取り出して、ページの余白に地図を書いてくれた。
手帳には変な文字が多く書かれていて、余白は少なかった。
「この通りに行けば間違いはないから」と言って、老人は地図を渡す。
その地図を見て、俺は首を傾げてしまった。
地図自体は問題ないとして、そこに書かれている文字が、見たことも
ない文字だったからだ。ひらがなでもなければ、漢字でも、ハングル
でもない。強いて言えば、子供の落書きみたいな文字だ。
「この文字は、何ですか?」と聞くと、老人は「バスの出る時間や」
とだけ言った。俺は理不尽な気持ちになりつつ、老人に礼を言って、
その通りの道を進むことにした。

 

408: 本当にあった怖い名無し 2014/01/25(土) 01:03:13.89 ID:M63QCTQ20

言われるがまま道を進み、トンネルを抜けると、確かにバス停があった。
バス停には、サングラスを掛けたババアが一人だけ座っている。
こんな真夜中に何でサングラスなのか、ちょっと疑問に思った。
けれども知恵おくれの駅員といい、老人が書いた謎の文字といい、
その程度の疑問はもうどうでもよかった。
とりあえずバスを待てばいいわけだから、老人の渡した地図を
ポケットに仕舞おうとした時、俺はぎょっとした。
二つ折りにしようとした紙片の裏側に、その文字がびっしりと書かれて
いたからだ。

 

409: 本当にあった怖い名無し 2014/01/25(土) 01:04:23.66 ID:M63QCTQ20

老人の言っていたバスが来たのは、10時くらいのことだったか。
バスに乗ったのは、俺と、サングラス姿のババアだけだった。
その時に気付いたんだけど、ババアは目が見えないらしかった。
ババアはY駅に向かう途中のバス停で降りた。
はっきり言えば、俺はつつがなくY駅に着いた。
というか、何で今まで着けなかったのか。
全くの疑問としか言いようがない。
はっきり言えば最初の時点でY駅に辿り着けなかったこと自体が
おかしいし、駅員に知的障害者が採用される訳がないし、老人の書いた
文字も変だった。ただその時点で俺自身がおかしかったわけだから、
統合失調症ゆえの妄想なんじゃないかとも思った。
一時間ほど遅れてN駅到着し、俺は二年間田舎で休養していた。
その間、様々な幻聴や妄想が俺を苛んでいた。
ただ症状は比較的軽い方で、俺の病気はその二年で治ったんだ。

 

410: 本当にあった怖い名無し 2014/01/25(土) 01:06:01.52 ID:M63QCTQ20

そこまではいい。
ただ問題は、先月の大晦日、俺が実家に帰省した時だ。
ふと俺の部屋を整理し、懐かしい思い出に浸っていた時、古いコート
のポケットから一枚の紙片が出てきたんだ。そのコートは、俺が
五年前に糖質で帰省した時のものだった。
紙片というのは、もちろん老人が書いてくれた地図だ。
それが今、俺の手元にある。

 

 

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