人のキオクは曖昧だ。
ふと思い出すことがある。俺には弟がいた記憶がある。
こういう勘違いは誰もが経験すると思う。人のキオクは曖昧でよく間違いするから。
もとからいなかったのかもしれないし、途中で養子に行ったのかもしれない。
親は、俺はずっと一人っ子で育ってきたとしか言わない。
信じてないわけではないけれど、俺のキオクのほうが正しいと思う。弟がいつ消えたのかは覚えていない。
ここ最近ではないと思う。気づいたら消えていたのだ。人は昨日の夕食すら曖昧だ。
ましてや、ずっと昔のことである。曖昧でも仕方が無い。でも俺には弟がいた記憶があるのだ。