あぁあれはきっと夢だったんだなあと思えるようになったので投稿します。
町民のほとんどが農業で生活してるような過疎の町で生まれ育ちました。
その年のお盆も、休みはあったんだけど、都会(っていっても愛知も田舎だけど)
生活に慣れた自分は、なんとなく億劫で帰らずに過ごしていました。
その日も仕事が休みで、家でゴロゴロテレビを見ていたんですが、
ふいにインターホンが鳴ったので、とりあえずインターホンのモニターを見ました。
ちなみにモニターだけ見たので、応答したわけではなく、
マイクの電源を入れない限り、こちらの様子は外からは分かりません。
モニターに映ったのは、黒いスーツを着た初老の男と、同様の女でした。
というのも、愛知に来て数年間、一度も受信料を払っていなかった自分は
スーツの人間が来たら居留守を使う、というのが定番だったからです。
内心どきどきしながら、いつも通り居留守を決め込もうとしたのですが、
落ち着いてもう一度モニタを見ると、どうやら集金というよりは
葬式帰りの夫婦のようでした。
よく見ると、二人ともスーツというよりは完全に喪服で
男は黒いスーツにネクタイ、女は胸に真珠のネックレスをしていました。
しかし、喪服で訪ねてくるような近しい関係ではなく、完全に自分の知らない二人でした。
その時点でかなり気味が悪かったのですが、特に男の表情に全く生気が無く
目は落ちくぼんで、口も半開きの無表情だったので、なんとなくやばそうだと思いました。
一瞬、インターホンの応答をしようか迷いましたが、そういう好奇心より
理性と恐怖心が勝って、なんとか居留守でやり過ごすことにしました。
しばらくそのまま固まっていたのですが、5分ほどして再度モニタの映像をオンにすると
その夫婦はいなくなっていました。
さっきのことが気になって、よせばいいのに、玄関から外をのぞいてみることにしました。
念の為ロックバーはかけたまんまで、ほんの隙間からのぞいてみることにしたのです。
すると、家の前の道路にトラックが走っていました。
軽トラではなくて、いわゆる引っ越しに使うような、中が空洞になっている
トラックで、本当なら荷物を入れて、後ろにカバーかなんかをかけて使うはずなのに
そのトラックの後部は全開で、中の様子が見れるようになっていました。
中には、大きな壺が3つ積んであって、それを、さっきの初老の女が押さえていました。
トラックは、走っているというよりは、僕のアパートの前を、規則的に旋回していました。
僕がドアを開けて、車は左側に2Mくらい走るのですが、今度はバックで円を描くように
戻ってきて、再度2Mぐらい進むのです。
人間の目の形、アーモンド形というのでしょうか。
左から弧を描くように前に進んで、今度は右に弧を描くようにバックしてくるのです。
まるで、中の壺を僕に見せつけるようにぐるぐる回っているのです。
何よりも怖かったのは、壺を抑えている喪服の女は、僕の家のドアをにらみ続けていることでした。
僕の田舎では、いまだに土葬の習慣があり、その壺に遺体を入れて住民でかついで
墓まで運ぶのです。
急いでドアを閉めると、一目散に布団に潜り震えていました。
気付くと朝でした。
きっとあれは夢なんだと思いこもうとして、今日に至りますが
もしかしたら、墓参りをしなかった僕へのお叱りだったのかな、と思ってます。