好きだったんです。
俺も昔は見えなかった物が見えたりするようになって(ぼや~っと人魂程度にですが…)、
面白がってました。
やっぱり知識がないといけないですね、面白がっちゃいけなかった。
夏休み、深夜2時前。
いつものように夜中まで遊んでた俺たちは、ちょっと離れた火葬場に肝試しをしに行くことに
なったんです。
もちろん、言いだしっぺはS。2人で行っても面白くないので、電話でAとYを呼び出しました。
怖がる二人を連れて、大きな道をまっすぐ自転車2台で走りました(二人乗り×2です)。
火葬場が近くなってきて、夏だというのに空気がどんよりと重く冷たくなった気がしました。
そして火葬場に到着。
でも実際は中に入る事はできなくて…当然ながら鍵がかかってたんですよね。
仕方ないからここで怪談でもして気分をもりあげようか。
とSが言い出したので、みんなで火葬場の敷地内で輪になり怪談を始めました…。
Sがお清め用に、と持ってきた塩のビンを振りながら話をしていたんです。
で、みんなを驚かせる…「わ~!」とか、そういう怪談あるじゃないですか。
その「わ~!」の瞬間に腕を振り上げて、塩をぶちまけてしまったんです。
Sはちょうど俺と対面で、俺以外の全員が頭から塩を被って文句を言ってました。
その時の俺はというと、ざまーみろ、日ごろの行いだよ。と能天気に笑っていたのです…。
時計の針が3時に近づいてきた時、そろそろやめて帰ろうか、という話になりました。
んじゃぼちぼち…と立ち上がり、正面を見た瞬間…。
ガラスに映ったんです、足のない男の子が、麦藁帽子に虫取り網を持って…。
Sが俺の様子の変化に気付きました。
俺は膝をガタガタ震わせ(ハッキリ見たのは初めてだったので)、言葉を発することすら
できませんでした。
瞬時、Sは自分の後ろを振り返り、「やっと出たのか」と言いました。
Sは突然、様子を見てくると言い、ガラスの方向へ向かって歩いていきました。
AとYは俺と一緒に立ちすくんでました。
そしてしばらくして…
俺はYに肩を借りて、ゆっくり立ち上がりSの方へ歩いていきました。
「あのな、この先が火葬場みたいなんだ」
とSは言いました。
つまり、この草むらを越えたところに荼毘に伏せる機械がある、と…。
確かに、草むらの奥の方に銀色の物体(学校にある焼却炉の大きい物のような…)が見えました。
間違いない、俺たちは確信しました。
さっきの俺が見た少年といい、Sが感じている鳥肌といい、間違いなくいる…。
全員がそう感じていました。
「じゃ、行ってくる」
Sはそう言うと草むらの中にズカズカと入っていきました。
奴の心臓はもう毛しか見えないんじゃないんでしょうか…。
そんな事を考えていると、突然Sが叫びました。
「やめろ、離せ!」
そしてSは物凄いスピードで引き返してきて「帰るぞっ!」と言うと、自転車に向かって走りました。
俺も腰を抜かしている場合ではありません。
猛スピードで自転車まで駆け寄り、後ろにYを乗せて急発進。
全力でこいで、明るい大通りまで走りました。
そして、さっきまで晴れていたはずなのに、突然の大雨…。
間違いなく通り雨なのですが、先ほどの出来事からも不気味で仕方ありません。
帰路でYが肩を叩いてきて、俺を怖がらせて楽しんでましたが、2回、3回としつこいので
無視しました。
そして、地元に帰ってくると、暖かい物がほしくなり、コンビニに入る事にしました。
まぁ、濡れた全身にクーラーが痛かったですが…。
「しかしY、何度も肩を叩いても、効果がないって何で分からないかなぁ?」
俺が笑いながら言うと、Yは
「え…?」
と言いました。
Yは言いました。
おかしいです。俺の肩は3回叩かれてるんです。
きっとパニックでおかしくなったんだよ、と慰められ、みんなでYの家に向かう事に。
道中、俺はずっとパニックなんかじゃない、と思っていました。
だって、肩を叩かれたのは大通りに出た後…つまり、俺は既に落ち着いていたのですから。
「明日は昼からプールに行こうぜ」
そんな話をしながら、Yの部屋で雑魚寝することに。
ですが、みんながウトウトと寝始めた頃、窓がガタガタうるさい事に気付いたんです。
「何かうるさくねぇ?」
と俺が言うと、みんなも同じように
「だよね、うるさいよね」
と部屋にひとつしかない窓を見ました。
しばらくの沈黙の後、Aが
「おい…誰かカーテン開けろよ」
と、みんなが思っていた事を口にしました。
Sが無言で立ち上がり、勢いよくカーテンを開きました。
「うわああああああああああああああ!!」
カーテンにはびっしりと無数の手、手、手。
大きなものから小さなものまで、隅から隅まで白い手形がたくさん。
しかも、Yの部屋の窓は曇りガラスで、ハッキリ物が見える事なんてありません。
それが、曇りガラスよりもクッキリと手形が…。
俺は失神しました。
どうやら"連れてきた"のはやはり俺のようです。
詳しい話を聞こうとしたのですが、親御さんは何も教えてくれませんでした。
ただただ
「この事は忘れなさい」
と言うだけで…俺は一体、何を連れてきたんでしょうか。
今となってはみんなとも疎遠で、確かめる手段もありません…。
長文の割に面白くなかったかもしれません。
実体験をそのまま書いたので許してくださいorz
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