割と仲良かった友達2人とその廃墟を探索することになった。友達をAとBとしよう。
勿論廃墟とはいえ、正面の入口は鍵かけられてたんだけど、裏口は何故か空いてて、そこから侵入出来た。
別に肝試しとかじゃなく、探検みたいな感覚だったから初めは昼間に軽装で忍び込んだ。
中は大分荒れてて、いろんな物が雑多に転がっていた。
ロビーや客室などを探索し、ほとんどの部屋は鍵がかかってて空かなかったんだけど、4階の一室だけ鍵が空いている部屋を見つけて、秘密基地にすることにした。
夕方になり、電気がつかなくて暗くなってきたので、翌日いろいろ使えそうな物を揃えて持ち込もう、ということになった。
それからAの家で持ち込む物を考え、ゲームしてそれぞれ帰宅した。
翌日の昼過ぎに、各々懐中電灯や、コンセントは使えなそうだったので照明の足しにキャンドル、お菓子、飲み物とは別に水などを持ち寄り、再び廃墟へと向かった。
それ等を4階の部屋に置き、前日に行かなかった地下への探索をすることにした。
地下は日が差さなく、電気もつかないので真っ暗だったため、前日は探索を断念していた。
地下はそれなりに広く、いくつも部屋があった。空いている部屋と空いていない部屋があり、俺たちははぐれないように一定の距離を保ちながら何か使えるものはないか探していた。
地下は本当に暗く、また部屋の中は特に閉塞感で不気味さを漂わせていた。昼間とはいえ、だんだん怖くなっていたが、AもBも平気な様子だったので、俺も怖がるそぶりを見せないようにしていた。
そして、地下の空いている部屋で鍵の沢山入っている箱をみつけた。鍵を取り出しながら見ていくと、客室の鍵も幾つか入っていた。
そこで一旦箱ごと上に戻り、客室の鍵が使えるか試してみた。幾つか試してみたが、何故か部屋番にあった鍵でも鍵を開けることは出来なかった。鍵穴には入るのに、回せなかったのだ。
俺「ホテルを閉めるときに何か特殊な処理でもしたのかな」
A「4階のあの部屋は空いててラッキーだったな」
などと話し、次に客室以外の部屋の鍵もあかないか試すことにした。
その中で「控え室」という鍵を見つけ、その部屋は地下にあったのを見ていたので、もう一度地下に向かうことにした。
地下の控え室とかかれたドアの前に戻り、鍵を回すと、今度は鍵が開いた。
Bがゆっくりと中を覗こうとすると、強烈な異臭がしてすぐにドアを閉めた。
A「なんの臭いだよ?!くっさ!!」
B「なんか腐ったような臭い・・・・?」
そう、その部屋から放たれた臭いは明らかに腐敗臭だった。地下の暗さも相まって俺は急に怖くなった。
俺「なんかヤバくね?もう戻ろうぜ」
A「えー、何があるのか気にならない?」
俺「いややべーだろ、今の臭い、やめといた方がいいって」
A「大丈夫だって、鼻摘まんで覗けば良いじゃん」
Aはそう言ってドアノブに手をかけた。Aはこういう時、妙に雑というか、慎重さに欠ける奴で、ドアを思いっきり押し開けてバッと中を照らした。
俺たちは叫びながら全力で逃げ出した。血が冷めるような感覚に包まれて、何度も転びそうになりながら、ロビーに飛び出し、裏口から飛び出し、廃墟から100m位走り続けた。
俺「なにあれ?!なにあれ!!」
B「犬が・・・・あぁああ・・・・」
俺「なんであんなとこに犬の死体があんだよ!!!!」
B「こぇえええなんだよもう!!!」
俺とBが怖え怖えと叫んでいると、青ざめたAが口を開いた。
A「なぁ・・・・見たの・・・・俺だけか・・・・?」
俺「え?」
A「犬の右にさぁ・・・・人の足みたいなのが・・・・」
ここまで言ってAは泣き出した。俺も泣いた。犬の奥に見えた血糊はもしかして、と三人とも想像した。
ひとしきり泣くと時刻は夕暮れ時になっていて、人通りの少ない道にいたので、このままここに居たくない、帰りたいと言った。
三人ともかなりビビっていて、誰かに話さなきゃいけない、という話にはならず、その時のことは皆で隠し通すことにした。今考えると最低だが、まぁ中学生だったし勘弁してくれ。
四階の部屋にお菓子やらいろいろ置きっ放しだったが、取りに戻る勇気も無く、三人でチャリに乗って帰宅した。
それから3日ほど俺は家を出られなかった。
しばらくしてから、Aが大事にしてた鞄を取りに行きたいと言うので、四階の部屋に行くだけ、絶対に地下には行かない約束で廃墟に行ったが、その時にはもう裏口の鍵も閉められていた。
別にそれ以降呪われた、とかは無く、寝る時に思い出されて震えることが多々あった程度
そのホテルはいつの間にか改装されてて、今は老人ホームだかなんだかになってる